小児科医になるには?大学合格からの流れや向いている人の特徴を解説
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医師を目指す学生の中には、きっかけを「子どもの頃、お医者さんが憧れだった」といった方もいるでしょう。
小児科医は新生児から15歳くらいまでの子どもの治療を専門に行う総合医の一種です。
やりがいが大きいといったプラスの評判がある一方で「大変」「体力勝負」「将来性があるのか不安」といったマイナスの評判もある小児科医ですが、実際はどうなのでしょうか?
今回は、小児科医の仕事内容や活躍できる職場、年収ややりがいといったことから、小児科医になるまでの流れを解説します。
医師を目指している中高生は参考にしてください。
小児科とはどのような診療科?
小児科医とは、新生児から15歳前後の子どもを対象に治療を行う総合医です。
単に病気を治すだけでなく、家族の状況やライフスタイルに応じて最適な療法を提案してくれます。
また、必要であれば地域の学校や自治体の福祉課と連携して、子どもにとって最適な方法を考えます。
近年は、小児科も小児内科・小児外科・小児精神科など子どもの病気ごとに診療や治療の細分化が進んできました。
しかし、現在も子どもの病気を総合的に診療し、必要とあれば専門医につなげる小児科医も多いです。
以下に、小児科医の仕事内容や活躍できる職場をより詳しく紹介します。
小児科医の仕事内容
小児科医の仕事内容は、大きく分けて2つあります。
1つは、小児の診療や治療です。
子どもと大人は体の作りに基本的な差はありませんが、処方する薬の種類や量は異なります。
また、同じ子どもでも、新生児と思春期の子どもでは使える薬なども違います。
子どもの年齢や体格に応じて、最適な治療をおこなうのが小児科医の役割です。
2つめは、自治体や学校と連携して子どもの健全なサポートを行う仕事です。
予防接種や赤ちゃんの定期検診などは、小児科医の働きなくしては実施できません。
近年は発達障害の認知も広がり、早期発見するための検診も行われています。
したがって、小児科医の仕事は他の診療科の医師の仕事に比べると、かなり幅広い傾向です。
関わる方も患者とその家族だけでなく、教師や保健師、福祉関係の職員と多岐にわたります。
小児科医が活躍できる職場
小児科医が活躍できる職場には、総合病院、診療所(クリニック)、小児が関連する施設などがあります。
入院施設がある大規模な病院は、小児に関する医療の中でも高度かつ最新の治療を実施しているところもあります。
また、小児専門の子ども病院の中には、周産期センターを併設して高リスク妊婦や、疾患のある新生児に対応しているところもあり、産婦人科医と小児科医が連携して治療を行うことも多いです。
個人病院や入院設備がないクリニックは、「町のお医者さん」として子どもの健全な成長を見守る役割を担っています。
病気の治療のほか、発達検診や予防接種をおこない、必要ならば大きな病院を紹介するのも仕事です。
このほか、非常勤として福祉施設などに勤める医師もいます。
小児科医の年収
小児科医の年収は、平均で1428万9000円です。
医師の平均年収が1,378万3000円なので、100万円近く高いです。
かつて、小児科医は医師の中では儲からないといったイメージがありましたが、現在は医師不足で自治体の中には高額な給与を条件に小児科医を招くところもあります。
ただし、小児科医になれば誰でも1千万円以上の年収が約束されるとは限りません。
開業医と勤務医では、給与が変わってきます。
また、当直がある、なしや勤務日数でも給与は変わってくるでしょう。
なお、平成19年に厚生労働省が発表した「安心して生み育てられる産科・小児科医療体制の構築」によると、小児科医に占める女性医師の割合は、31.2%と他の診療科に比べて高めです。
その一方で、女性医師は出産や育児などで非常勤勤務を選択する方も多く、そのような方は年収も低めです。
しかし、医師は開業医となると定年がないため、65歳を超えても現役で働いている方も多く、生涯年収はやはり高めです。
女性医師も、子育てが一段落したら常勤医として働くケースも増えています。
小児科医のやりがいとは?
小児科医のやりがいには、「子どもの笑顔が見られる」「子どもの病気を治し、成長を見守られる」「親御さんに感謝される」「社会貢献をしていると実感できる」といったことがあげられます。
小児科を受診する子どもは、病気だけでなく発達に問題を抱えているケースもあります。
また、体だけでなく精神的な病気の子どももいるでしょう。
一筋縄ではいかない病気が多い分、病気が治ったりより生きやすくなる手段が見つかったりしたときの喜びはひとしおです。
また、小児周産期医療等に関わった場合、赤ちゃんが無事に健康に育った姿を見て、やりがいを実感することもあるでしょう。
子どもが好きなだけで小児科医はできる?
子どもが好きなので、子どもに関わる仕事に就きたい方は一定数いるでしょう。
小児科医もその一つです。
しかし、小児科医は単に子どもが好きなだけでは務まりません。
小児科医は総合医の一種です。
小児がかかる疾患は幅広く、子どもしか発症しなかったり感染の危険が高かったりする病気もあります。
また、病気の知識だけでなく発達や福祉に関する知識も必要です。
しかも、医学の技術や知識は常に進歩し続けるので、小児科医は生涯にわたって勉強し続けなければなりません。
そして、病気の子どもと向き合うことは、ときには悲しい結果につながります。
子どもが健全に育つのが半ば当たり前になっている社会で、子どもの死と向き合うのはとてもつらいことでしょう。
さらに、小児科医ができることには限界があり、ときに無力感にさいなまれる場合もあります。
このような苦難を乗り越えてなお、「小児科医を続けたい」という意思の強さが必要です。
子ども好きを小児科医を目指す理由に挙げても良いですが、それ以外の理由も持っておくと、自分を支える力になってくれるでしょう。
小児科医に向いている人の特徴
小児科医には、向き、不向きがあります。
ここでは、小児科医に向いている方の主な特徴を紹介するので、小児科医に興味がある方は、参考にしてください。
根気強い人
子どもは、小さいほどうまく自分の気持ちを言語化できません。
さらに、赤ちゃんは不快なことがあればところかまわず泣きます。
つまり、小児科医は子どもの表情や態度をじっくりと観察して、普段と違うところがないかどうか確認する必要があります。
また、小児科医は親とのコミュニケーションも重要です。
しかし、子どもの具合が悪かったりケガをしていたりすると、親も気が動転しがちです。
親を落ち着かせ、話を聞き出すにはコミュニケーション能力だけでなく、根気も必要となるでしょう。
同じ話を10回、20回しても穏やかでいられる人が小児科医に向いているといえます。
子ども相手が苦にならない人
子どもは、大人よりも傍若無人です。
体力がある子どもの場合、医師にいたずらをしたりふざけた態度を取ったりする場合もあるでしょう。
子どもの生意気な態度は、実の親ですらイライラさせられるものです。
「せっかく病気を治してあげようとしているのに」などと思うと苛立ってしまうことでしょう。
また、子どもによっては、小児科医を「嫌なことをする人」と認識している場合があります。
このような子どもの態度にめげることなく、穏やかに接せられる人が、小児科医に向いているといえるでしょう
体力がある人
子どもは少し元気になれば、無限に動き回ります。
また、生まれたばかりの赤ちゃんは大人ならば気にならないほどの環境の変化で容態が急変する可能性もあるでしょう。
このほか、元気だった子どもが急変する可能性もあります。
子ども相手の医療は気が抜けません。
患者さんの容態によっては休日や休憩時間もなく、すぐに駆けつけられるように待機期間が続く場合もあるでしょう。
そのような日々を乗り越えるためには、体力が必須です。
特に、入院設備がある大病院に勤めるなら、体力に自信がないと小児科医は務まらないケースもあるでしょう。
小児科医になるまでの流れ
ここでは、日本で小児科医として働けるようになるまでの流れを解説します。
小児科医になるには、大学の医学部に入学しなければなりません。
ここでは、医学部に入学した後、どのような流れで小児科医になるのか、段階を踏んで解説していくので、参考にしてください。
医学部に入学する
小児科医になるためには、まず大学の医学部医学科に入学して定められた単位を取得して卒業します。
そうすれば、医師国家試験の受験資格を得られます。
2023年現在、医学部医学科に入学する以外、医師国家試験の受験資格を得る方法はありません。
小児科医になりたいなら、まず医学部合格を目指しましょう。
医学部医学科は、82の大学に設置されています。
そのうち、国立大学が50校、私立大学が31校、防衛医科大学校が1校です。
医学部は難易度も倍率も全ての学部の中でトップクラスです。
偏差値は最低でも60以上となっており、倍率は国立で4倍、私立大学で12倍程度となっています。
医学部に合格するには、地方の国立大学やそれほど知名度が高くない私立大学であっても、難関私立大学や国立大学に合格するレベルの学力が必要です。
現役で合格できず2浪、3浪する方も珍しくありません。
また、医学部の試験は学科試験のほか、小論文や面接など独自の試験が科されます。
そのため医学部受験専門の対策が必要です。
医師国家試験に合格する
医学部医学科に合格したら、6年間かけて定められた単位を取得します。
これは、通常の大学生と同様ですが、医学部は進学の基準が厳しく、所定の単位が取れなければ、容赦なく留年するでしょう。
したがって、勉学漬けの6年間を送る学生が大半です。
無事に6年で所定の単位を取得したら卒業試験を受けます。
医学部の卒業試験は1~3ヵ月間に渡って行われ、不合格だと卒業できません。
卒業試験に合格したら、毎年2月に行われる医師国家試験に挑みます。
2023年の医師国家試験の合格率は91.6%でした。
合格率はとても高く、一見すると安易な試験に見えるかもしれません。
しかし、6年かけて単位を取得し、卒業試験に合格しても10%近い受験生が落ちる試験です。
一朝一夕の勉強で合格できる難易度ではありません。
不合格になると1年間「医師国家試験浪人生」として過ごさなければならないので、一発合格できるように勉強に励みましょう。
初期研修を受ける
医師国家試験に合格したら、初期研修医として就職した病院でいろいろな科をローテーションして研修を行います。
研修期間は2年間で、1つの科を1〜3ヵ月かけて研修を受けますが、小児科は2年目に研修の順番が回ってきて、期間は1ヵ月です。
外科、内科に比べると研修期間が短いため、せわしなさを感じるかもしれません。
この期間中に自分が小児科に適性があるかどうか判断しましょう。
その後、地域保健・医療の各領域で研修します。
残りの月日は自身で診療科を選択して研修を受けて初期研修は終了です。
小児科医を志望するなら、2年目にできるだけ長く小児科医で研修が受けられるようにしましょう。
専攻医となりより専門的な研修を受ける
2018年より導入された新専門医制度により、初期研修を修了した新米医師は専攻分野を決定して、より専門的な知識を身に付けるべくさらなる研修を行います。
小児科医になる場合は、ここで小児科医を選択し、さらなる研修を積みましょう。
専攻医になるとだんだんと担当患者も持てるようになります、副業として別の病院の当直医なども引き受けられるようになるので、収入も上げられます。
最低でも3年間の研修を終えると、ようやく「小児科医」と名乗れるようになり、開業も可能です。
小児科医の将来性
日本は少子高齢化により、子どもの数の減少が大きな問題になっています。
ここでは、小児科医の将来性について解説します。
医師不足で需要は高い
小児科医は、外科医や産婦人科医と同様に不足している診療科です。
少子高齢化が進んでも子どもがゼロにはなりません。
その一方で、小児科医が廃業するなどして、子どもが受診できる病院がなくなって困っている方も増えています。
そのため、自治体によっては高額な報酬を条件に小児科医を確保する活動をしているところもあります。
ですから、少子高齢化とはいえ、需要がゼロになることはありません。
むしろ、需要が増えているといえます。
病院だけでなく学校などでも活躍できる
小児科医は、開業したり勤務医として働いたりするだけでなく、校医や福祉施設の医師として働く道もあります。
高額な収入は望めませんが、そのかわり常勤が難しい場合でも対応ができます。
女性医師の場合、育児と仕事を両立するには、非常勤のほうが都合の良いケースもあるでしょう。
小児科医は非常勤でも働き続けられる場所が多いです。
長年現役を続けられるメリットもある
医師は長年現役を続けられる仕事です。
小児科医は経験を積むほど重宝がられる仕事なので、65歳以降にも現役を続けやすいでしょう。
第一線での治療は退いても、アドバイザー的な役割で現役を続けられる可能性もあります。
医学部に入学するなら予備校を活用しよう
最後に、小児科医になるために最初に突破しなければならない難関、医学部に合格する方法を解説します。
医師を目指している学生の方は、ぜひ参考にしてください。
医学部専門予備校の特徴
医学部専門予備校は、文字通り医学部の受験に特化した予備校です。
いろいろな予備校がありますが、個人の学力に合わせたマンツーマン指導や細かいカリキュラム作成などが共通した特徴です。
また、医学部受験の最新情報も素早く入手でき、メンタルサポートも充実している予備校もあります。
医学部専門予備校と大手予備校ならどっちがおすすめ?
全国に教室を展開する大手予備校にも「医学部コース」を設けているところもあります。
単純に学費のみを比べた場合、大手予備校のほうが安価ですが、カリキュラムは万人向けで授業は集団で行うのが基本です。
したがって、現在の成績でも十分に医学部に合格できる実力がある、もしくはもう少し頑張れば合格圏に入る、という学生ならば大手予備校の医学部コースでも十分でしょう。
また、医学部以外にも興味がある学部があり、ぎりぎりまで志望校、志望学部を選びたい場合は大手予備校がおすすめです。
一方、相当頑張らないと医学部の合格圏に入るのは難しいけれど、ぜひ医学部に入りたい学生や、絶対に現役で合格したい学生は、医学部専門予備校が適しています。
自分に合った医学部予備校の選び方
多くの医学部予備校では、無料体験学習を実施しています。
特に東京や大阪などの都市部で医学部受験に挑戦する場合、複数の医学部予備校の中から選べるでしょう。
ですから、体験授業を利用して自分にあったところを選びましょう。
また、遠方の学生には寮が完備しているところを選ぶと費用が節約できます。
まとめ
小児科になるには、まず医学部に合格しなければなりません。
中高生の皆さんは医学部合格を目指して勉強するのがおすすめです。
医学部に合格するにはトップレベルの成績が必要と思われがちですが、医学部専門の予備校に通い適切な指導を受ければ、一気に学力がアップできる可能性があるでしょう。
ぜひ医学部専門学校の利用を検討してみてください。
この記事の執筆者:医進の会代表 谷本秀樹
大学入試は四谷学院などの大手予備校や多くの医学部受験予備校で、主に生物の集団授業と個別授業で300人以上の受験生を担当。
自身の予備校『医進の会』発足後は、これまで500人以上の生徒の受験と進路指導に携わってきた。
圧倒的な医学部入試情報量と経験値、最適なアドバイスで数多くの受験生を医学部合格に導いてきた、医学部予備校界屈指のカリスマ塾長。