外科医になるには?医学部入学から専門研修プログラムまでの流れを解説
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カテゴリ:基礎知識
医師にはたくさんの専門がありますが、外科医はその中でも特に認知度が高めです。
外科医をモデルにした映画やドラマ、マンガも多く、格好良くクールなイメージを持っている方も多いでしょう。
その一方で、外科医の実情はあまり知られていない部分もあります。
また、日本の医学会では現在、外科医不足に悩まされてもいるのです。
本記事では、外科医の仕事内容や種類、年収ややりがい、外科医になるまでの流れを紹介しましょう。
医師を目指している方は、参考にしてください。
外科医の仕事内容
外科医とは、病気を外科的な処置で治す医師の総称です。
内臓・骨、神経など治療できる範囲は幅広く、内科医と共に、医師の代表的な診療科の1つとなっています。
外科医の代表的な仕事は手術ですが、外来診療や入院患者の診察なども仕事の一環です。
このほか、外部の症例検討会や研修会に参加して知識や技術を向上させたり、学会に出席したりするのも仕事です。
経験を積んで「ベテラン」と呼ばれるようになったら、後身の指導も行います。
勤務先は、入院施設が充実した総合病院が多いですが、日帰り手術を専門とする診療所に勤務したり、開院したりするケースもあります。
また、外科は男性医師が多い分野でもあり、厚生労働省が2017年に公表した「女性医師キャリア支援モデル普及推進事業の成果と今後の取組について」によると、外科を専門とする女性医師は7.8%です。
皮膚科は46.1%、眼科、麻酔科は約38%が女性医師なのと比べると、男性医師が突出して多い診療科といえるでしょう。
以下に、外科医の種類や年収などをもう少し詳しくご紹介していきます。
外科医の種類
外科医は、ドラマや映画の中では人体のあらゆる場所を治療しますが、実際の外科医は細かく専門分野が分かれています。
代表的な分野には、胸部外科や心臓外科、脳神経外科、形成外科、整形外科などがあります。
ですから、一口に「外科医」といっても、手術や治療ができる分野、得意とする分野が異なるのです。
なお、美容外科や泌尿器科なども外科の一種です。
美容外科は、第二次世界大戦後に急速に発展した形成外科から枝分かれし、1978年に標榜科認定を受けて独立した専門科になりました。
このように、医療技術の進歩によって外科医の専門分野は細分化が進んでいっています。
これからも新しい専門分野が誕生していくことでしょう。
ちなみに、外科医を目指す中高生の中には「外科医になりたいけれど、専門分野までは決められたい」といった方も多いと思いますが、心配する必要はありません。
医師になり、さらに外科医を専門分野に選ぶまでには時間がかかります。
座学や実習で経験を積みながら、じっくりと考え、選択できます。
外科医の年収
外科医の年収は、年齢や専門分野によって変わってきます。
医師全体の平均年収は、令和3年度で、1,378万3000円です。
外科医は全ての診療科の中でも高いほうで、中央値は1,650万円となっています。
平均ではなく中央値なので、外科医の年収の高さがおわかりいただけるでしょう。
また、外科医の中でも専門分野によって年収が変わってきます。
もっとも年収が高いのが美容皮膚科で、年収中央値は2,000万円、次いで肛門科が1,800万円と続きます。
美容皮膚科に勤める医師の年収が高いのは、美容医療全般は原則として健康保険が適用されず、自由診療のためです。
病院で自由に手術費用や診療費用を決められるので、必然的に勤務する医師の年収も高めとなります。
肛門科は、大腸内視鏡検査や外科的処置など幅広い治療を行っており、かつ近年は大腸がんの増加によって患者数が増えている診療科です。
そのため、勤める医師の年収も高めになっています。
外科医は医師の中でも高給ですが、外科医になれば即高い年収が得られるわけではありません。
外科医は高い技術が求められるので、一人前になるまでに時間がかかります。
診療科を問わず、医師の年収の中央値を年齢別に見ると20代が980万円、30代が1,170万円です。
45歳以降になって、ようやく中央値が1,500万円となります。
また、外科医の年収が高いのは、それだけ重い責任を負っているためです。
年収が高いからといった理由だけで外科医の道を選択するのはおすすめできません。
外科医は激務?
近年は外科医を志望する医学生が減少し、外科全体の人員不足が問題となっています。
外科医が激務なのは事実です。
2019年、厚生労働省は医師の残業時間の上限を「年1900〜2000時間」とする制度制定を提案しました。
つまり、現状、医師の残業時間はそれ以上だということです。
これは医師全体の問題ですが、外科医も長時間勤務であることには変わりありません。
外科医は手術によって患者の疾患を治療しますが、手術の種類によっては10時間を超えるものも珍しくありません。
手術が短時間で終ったとしても、1日何件も手術をこなすケースもあります。
また、手術前や手術後に患者を診療し、急変があれば対応しなければなりません。
夜中に患者が急変すれば、すぐに駆けつけて処置を行います。
担当患者が落ち着くまで休日も満足に取れない場合もあるでしょう。
このほか、入院施設がある病院では当直勤務があり、当直の翌日でも通常通りの勤務があります。
このような医師を取り巻く現状が、外科医の長時間労働、いわゆる「激務」につながっています。
女性医師が外科医に少ない一因には、勤務時間が長く、人一倍体力が求められるためです。
しかし、近年は医師の就労環境も少しずつ改善されてきています。
外科医になったら問答無用で休日や昼夜関係なく働かなければならない、というわけではありません。
それでも、一人前になるために、実務と勉強を両立させなければならず、「激務だ」と感じる機会は多いでしょう。
外科医のやりがい
外科医のやりがいは「手術をして目の前で苦しんでいる患者を救える」ことに集約されます。
医師を目指す方の多くが、「病気の方を救いたい」「病気やケガで苦しんでいる方を少しでも減らしたい」と考えているでしょう。
外科は「手術」という手段を通して「患者を救った」という実感が最も得やすい診療科です。
また、医療技術は日進月歩ですが、外科は最も最新技術が取り入れられやすい診療科です。
勉強をして最新技術を身に付ければ、スキルアップした実感も得られます。
それもまた、外科医のやりがいの一つです。
このほか、医療行為の中には医師の中でも「外科医」にしかできないものも多く、それを利用して患者を救えたときも、やりがいを感じられるでしょう。
外科医に求められるスキル
外科医に求められるスキルというと、手先の器用さや何事にも動じない度胸、素早く処置を行なえる俊敏さなどがイメージされます。
しかし、医療技術が進んだ現在、人一倍の器用さや俊敏さはそれほど重要ではありません。
ここでは、実際の医療現場でどのようなスキルが外科医に求められるのか、紹介します。
コミュニケーション能力
外科医にとって最も重要な能力は、コミュニケーション能力です。
外科医の仕事は手術だけではありません。
患者の診察も重要な仕事です。
患者の症状を正確に聞きだして、必要な検査を指示し、手術が必要かどうか判断するには、コミュニケーション能力が欠かせません。
医師の態度によって患者さんが心を閉ざしたため、必要な情報を得られなければ、誤診につながる恐れもあります。
患者さんが医師に対して不信感を持てば、たとえ手術が成功しても、双方にとって素直に「よかったね」といえない状況になるかもしれません。
また、手術は外科医1人では行なえません。
大きな手術になるほど麻酔科医、看護師、臨床工学士などさまざまな方との協力が必要です。
手術の内容や患者さんの容態によっては、手術前や手術後に、内科医や小児科医との連携が必要になるでしょう。
スムーズに治療を進めていくには、コミュニケーションを密に取る必要があります。
専門分野によっては、手先の器用さよりコミュニケーション能力の高さが重要視されるでしょう。
探究心・向上心
外科の分野は医療技術の中でも進歩が早く、毎年のように新しい技術や診断方法が開発されています。
より患者さんの負担に少ない手術方法が選択できれば、術後の生存率も上がり社会復帰も早くなるでしょう。
外科は通常の業務をしているだけでも手一杯になりがちな忙しい診療科です。
新しい技術や知識を勉強したくても時間も暇もない、と嘆く方も多いです。
そこをなんとかして新しい技術や知識を身に付けようと頑張る探究心や向上心が、外科医には求められます。
体力
外科医の主要業務である手術は、長時間にわたる場合も珍しくありません。
集中力を維持し、手術を無事に成功させるには体力が必要です。
また、新しい外科的な技術を勉強するためにも、体力が必須といえます。
このほか、一人前の外科医になるためには、指導医の元についてアシスタント業務をこなしながら勉強を続けなければなりません。
修行期間は10年近くに及ぶ場合もあるでしょう。
これを乗り切るにも、体力は大事です。
女性は男性に比べると体力がないと思われがちですが、健康に気を配り規則正しい生活を送るように心がければ、男性に負けない体力を付けることも可能です。
外科医になるまでの流れ
日本で外科医になるには、大学の医学部に入学しなければなりません。
しかし、医学部に入学した先にどのような経過をたどって外科医になるのか、具体的なことを知らない方もいらっしゃるでしょう。
ここでは、医学部に入学した後も詳しく外科医になるまでの過程を解説します。
医学部に入学する
外科医になるためには、まず大学の医学部医学科に入学して医師国家試験の受験資格を得なければなりません。
2023年現在、医学部医学科に入学する以外、医師国家試験の受験資格を得る方法はないので、外科医になりたいなら合格を勝ち取りましょう。
医学部医学科は、82の大学に設置されています。
そのうち、国立大学が50校、私立大学が31校、防衛医科大学校が1校です。
医学部は難易度も倍率も全ての学部の中でトップクラスです。
偏差値は最低でも60以上となっており、倍率は国立で4倍、私立大学で12倍程度となっています。
私立大学の医学部医学科は入学金や授業料が高いといったイメージがありますが、近年は奨学金も充実するなど、経済的に厳しい学生への救済措置も豊富です。
なお、防衛医科大学校は入学金も授業料も無料で給与までもらえますが、入学すると防衛省職員となり、全員入寮が義務づけられるなど、行動に一定の制限があります。
医師国家試験に合格する
医学部医学科に合格したら、6年間かけて定められた単位を取得したうえで卒業試験を受けます。
これは、通常の大学生と同様ですが、医学部は進学の基準が厳しく、所定の単位が取れなければ、容赦なく留年が決定します。
また、医学部の卒業試験は1〜3ヵ月間に渡って行われ、不合格だと卒業できません。
卒業試験に合格したら、毎年2月に行われる医師国家試験に挑みます。
2023年の医師国家試験の合格率は91.6%でした。
合格率だけで見ると、受験した学生がほとんど合格するイメージがありますが、6年かけて単位を取得し、卒業試験に合格しても10%近い受験生が落ちる、と言い換えれば決して易しい試験ではないとわかるでしょう。
医師国家試験に合格すれば、「医師」として医療行為を行なえるようになります。
初期研修を受ける
医師国家試験に合格したら、初期研修医として就職した病院でいろいろな科をローテーションして研修を行います。
研修期間は2年間で、外科の研修は1年目におこない、期間は3ヵ月です。
この3ヵ月で、外科の診療の基礎を身につけながら外科の仕事内容を実際に経験しましょう。
2年目は、小児科、産婦人科、精神科を1ヵ月単位でローテーションし、続いて地域保健・医療の各領域での研修をします。
残りの月日は自身で診療科を選択して研修を受けて初期研修は終了です。
専攻医となり、専門的な研修を受ける
2018年より導入された新専門医制度により、初期研修を修了した新米医師は専攻分野を決定して、より専門的な知識を身に付けるべくさらなる研修を行います。
外科医になる場合は、ここで外科を選択し、さらに細かい専門分野に分かれて研修を積みましょう。
つまり、医学部の6年間、初期研修医の2年間、計8年間、自分の専門科を考える期間があるのです。
専門医の研修は3年以上です。
後悔のないよう、よく考えて外科の専門分野を選びましょう。
専攻医になると徐々に手術にも参加できるようになり、副業として別の病院の当直医なども引き受けられるようになります。
最低でも3年間の研修を終えると、ようやく「外科医」と名乗れるようになるでしょう。
現役で医学部に合格し、留年せずに卒業した場合、この時点で30〜31歳です。
外科医としてさらにキャリアアップする方法
外科医としてキャリアアップをしていくには、手術をたくさん経験する、最新の医療技術を使った手術ができる病院に勤める、留学するなどの手段があります。
選んだ専門分野によって、キャリアアップの最適な方法は異なりますが、一生勉強が必要なことは変わりません。
外科医として一通りの技術を身に付けたら、転職を含めてキャリアアップの方法を模索してみましょう。
医学部に入学するなら予備校を活用しよう
最後に、外科医になるために最初に突破しなければならない難関である医学部に合格する方法として、予備校を活用するメリットを紹介します。
医師を目指している学生の方は、ぜひ参考にしてください。
医学部専門予備校の特徴
医学部は全ての大学の学部の中でトップクラスの難易度を誇ります。
そのため、医学部受験に特化した「医学部専門予備校」があります。
医学部専門予備校は、個人の学力に合わせたマンツーマン指導や細かいカリキュラム作成などが特徴です。
また、医学部に合格するためのメンタルサポートも充実しており、最新情報もいち早く入手できます。
医学部専門予備校と大手予備校の違い
全国に教室を展開する大手予備校にも「医学部コース」を設けているところもあります。
単純に学費のみを比べた場合、大手予備校のほうが安価です。
しかし、大手予備校は基本的に集団授業であり、カリキュラムも大勢に向けて作られた万人向けのものです。
進学校のトップクラスの成績であり、現在の実力でも十分に医学部に合格できる実力がある、もしくはもう少し頑張れば合格圏に入る、という学生ならば大手予備校の医学部コースでも十分です。
しかし、相当頑張らないと医学部の合格圏に入るのは難しいけれど、ぜひ医学部に入りたいといった学生は、医学部専門予備校で手厚いサポートを受けたほうが合格できる可能性が高まります。
また、すでに実力は十分だが、絶対に現役合格したい方や医学部の中でもさらに難関の大学を目指したい方も専門予備校が適しています。
医学部に絶対合格したいなら医学部専門予備校が一押し
医学部は大学の学部の中で最も浪人生が多い学部です。
2浪、3浪の方も珍しくありません。
しかし、多浪生は現役生に比べるとどうしても合格基準が厳しくなりがちな大学もあるでしょう。
また、外科医は特に体力勝負の診療科なので、できるだけ20代のうちに一通りの研修を受けられれば、キャリアアップにより有利です。
医学部に絶対に合格したい場合は、医学部専門予備校への入学を検討してみましょう。
まとめ
外科は診療科の中でも特に知名度が高く、手術で一気に患者さんの病状が改善できるケースもあるため、やりがいがあります。
その一方で、体力勝負で一生勉強が必要な厳しい診療科でもあります。
魅力とデメリット、難易度全てを承知の上、進むべきかどうかを決めましょう。
また、医学部に可能な限り現役で合格したい場合は、医学部専門予備校への入学がおすすめです。
この記事の執筆者:医進の会代表 谷本秀樹
大学入試は四谷学院などの大手予備校や多くの医学部受験予備校で、主に生物の集団授業と個別授業で300人以上の受験生を担当。
自身の予備校『医進の会』発足後は、これまで500人以上の生徒の受験と進路指導に携わってきた。
圧倒的な医学部入試情報量と経験値、最適なアドバイスで数多くの受験生を医学部合格に導いてきた、医学部予備校界屈指のカリスマ塾長。