コラム - 大阪の医学部予備校

HOME コラム一覧 基礎知識 地域枠はやめた方がいい?後悔する?慎重に選択すべき理由やデメリットについて解説

地域枠はやめた方がいい?後悔する?慎重に選択すべき理由やデメリットについて解説

  • 公開日

カテゴリ:基礎知識

多くの医学部には、地域枠と呼ばれる医学部ならではの募集枠が設けられています。
本記事では地域枠はやめた方がいいのか、後悔するのかについて解説します。
地域枠は便利な点がある一方、デメリットもあります。
記事内では地域枠を選択する上での考えておくべきことについても解説しているため、地域枠の利用を考えている方は是非参考にしてください。

地域枠とは?

そもそも「地域枠」とはどのようなものなのでしょうか。
地域枠とは、ある地域や地方に住む学生に対して設けられた入試枠であり、地域医療の充実を図るために、地域に密着した医師を育成して、その地域の医療体制を強化することを目的とした制度のことをいいます。
地方部では人口や面積に対して医師が不足している傾向にあり、十分な医療サービスを提供できなくなる恐れがあります。
よって、地域枠は地域における医療発展に貢献において大切な制度であり、地域に根ざした医師育成のための仕組みとして、現在多くの医学部で導入されています。
各地域や大学によって具体的な内容は違いますので、地域枠利用を検討している受験生は事前にどの大学でどういった条件での枠を作っているのかをしっかり確かめておきましょう。

地域枠のメリット・デメリット

前項では、地域枠と呼ばれる医学部固有の制度の解説をしました。
この制度は、医師の偏在解消を目的として多くの医学部で取り入れられていますが、本項ではそのメリットとデメリットに焦点を当てて解説していきたいと思います。

地域枠のメリット

地域枠のメリットは主に3つあります。

学費を抑えられる

1つ目は、学費を抑え、家計の負担を減らすことができる点です。
実施主体によりますが、自治体などから奨学金が貸与される場合があります。
また、ある一定の条件をクリアすることによって、奨学金返還の義務が免除される場合もあり、学費を大幅に抑えられます。

入学に有利になる

2つ目は、入学に有利であるという点です。
前項でも述べた通り、地域枠は不足している人材を補うために設けられた制度であるため、一般選抜とは別枠で入試が実施されます。
そのため、競争が熾烈化している一般選抜とは異なり、その競争率は低くなっており、また定員割れしている大学も複数あります。
したがって、地域枠を利用することによって有利に医学部合格を勝ち取ることができるといえるでしょう。

医師国家試験の合格率が高い

そして3つ目は、医師国家試験の合格率が高い点です。
令和5年度の「地域枠入学制度と地域医療支援センターの実情に関する調査報告」によると、全地域枠のストレート卒業率および医師国家試験現役合格率は、継続して全国平均を上回っています。

地域枠のデメリット

他方で、地域枠にはデメリットもあります。
ここでは、地域枠制度を利用する上でのデメリットを2つ挙げます。

奨学金の返還義務がある

1つ目は、中途離脱する場合に奨学金の一括返還義務が生じる点です。
中途離脱を防ぐために利子も高く設定されているため、地域枠制度を利用するかどうか慎重に検討する必要があります。

卒業後の選択が制限されている

2つ目は、卒業後の選択が制限されている点です。
研修医である期間を含めた9年の間、該当する地域において医師として勤務することが、奨学金貸与や学費免除の条件として定められています。
また、自治体によっては、選択できる診療科に制限がある場合もあります。
さらに、この制限は仕事面だけではなく、プライベートの面においても関係してきます。
地域枠制度を利用すると、少なくとも15年間は拘束されてしまうため、変化するライフステージとの間に齟齬が生じる可能性が考えられます。

地域枠はやめるべき?後悔する理由

地域枠は学費が抑えられるなどのメリットがある一方、遵守しなければならない条件もいくつかあります。
ここでは地域枠を受験したことにより後悔するかもしれない理由を挙げていきます。

地元勤務しない場合は奨学金返還の義務

前項でも触れましたが、地域枠を受験して入学した場合は、修学資金や奨学金などが貸与されます。
医学部は、基本的に他の学部よりも学費が高額ですが、この学費や生活費を支援するための資金の貸与制度があるおかげで経済的負担を軽減でき、一般的な家庭の受験生でも気兼ねなく出願することが可能です。
しかし、あくまで「貸与」されているものですので、返還義務を伴います。
そのため、医学部卒業後は何かしらの方法で、この資金を大学等へ返還していかなければなりません。
一般的には、指定された地域で一定期間医療に従事することで返還義務は免除となりますが、この勤務義務を果たさない場合数百万円単位のお金の返還を求められることがあります。
さらに、返還の際には利息がかかる場合もあり、支援を受けた以上の請求を受けるというリスクもあります。
このように勤務義務や返還条件が厳格に設定されているため、入学前に十分に調べ、理解した上で出願しましょう。

キャリアが決められてしまう

地域枠では医学部卒業後から約9年間、指定された地域の医療機関に勤務する義務があります。
例えば、医学部の附属病院での勤務、離島や僻地等の診療所での勤務などがあげられます。
最初からこの類の医療機関での勤務を望んでいる人や地域医療に貢献する意識や熱意が強い人にとっては問題ないですが、その反面、都市部や専門性の高い医療機関などを希望している人にとってはキャリアの幅が狭まってしまい、後悔の原因となるでしょう。
また、地域医療のニーズに応じた専門性やスキルが求められるため、地域に根ざした医療の経験が積まれる一方で、他の分野での経験が不足する可能性があります。
そのため、自分のキャリアプランやライフスタイルにどのように影響を与えるかを理解し、十分に考慮することが必要です。

偏見に見られることも

悲しいことに、地域枠で医学部に入学した人を、偏見の眼差しで見る人が世の中にはいます。
コネで入ったのではないか、学力が低いから地域枠しか合格できなかったなど、さまざまな偏見や誤解をされたりします。
さらに、推薦枠で合格した人に対しては、一種の妬みのような感情をぶつけられ、目くじらを立てられることもあるでしょう。
このように不公平な評価や扱いをもたらすことがあり、地域枠で受験したことを後悔してしまう可能性があります。
偏見の眼差しで見るような人に出会ったときは、偏見を持つ人々の意見に影響されず、自分自身の専門性やスキルを高めることに専念したり、地域枠に関する偏見を持たないポジティブな人々と交流し、自分を支えてくれるコミュニティを築くことが重要です。

ライフイベントへの影響もある

地域枠は個人のライフイベントにも影響します。
例えば、女性の場合妊娠と出産が大きなライフイベントといえるでしょう。
当然のことですが、妊娠・出産の際は健全な状態で、健全な赤ちゃんを産むために休暇をとって身体を休ませる必要があります。
しかし、この妊娠や出産をするにあたって職場を離れなければならないため、人間関係に僅かに悪影響が出る可能性は否定できません。
一般的な募集枠で医学部に入学した人は職場を変えやすいですが、地域枠だと、勤務地があらかじめ指定されている場合があるため、なかなか環境を変えられず後悔してしまうこともあります。
そのため、地域枠を受験するときは、勤務地の変更をサポートしてくれるかなど指定の医療機関にどのような支援内容があるのか事前に確認しておきましょう。

生活環境に影響を与えることも

地域枠を利用して医学部入学をする場合は都市部から移住する人も多いでしょう。
そのような場合は、今まで生活していた環境とは異なる環境の中で生活をしていかなければなりません。
全く異なる環境での生活に柔軟に対応できなければ、ストレスとなり学習に集中出来なくなってしまいます。
せっかく入学できたとしても生活環境に馴染めず、大きな後悔とともに離脱してしまっては元も子もありません。
そうならないためにも、大学生活および卒業後9年間勤務できる環境であるのかきちんと調べておきましょう。
自分が居住する場所となるということを考え、情報収集するだけでなく、オープンキャンパスなどに参加し自分の目で学内はもちろんのこと、大学周辺も確認するようにしましょう。

出願の際に制限があることも

医学部地域枠を幅広く全国から募集する大学もあれば、地元出身者や医学部所在地にゆかりのある人など対象者を限定している大学もあります。
また指定する都道府県の高校や中学校の卒業生でなければ受験できない医学部もあります。
医学部地域枠を利用するのであれば、事前に受験資格があるのか必ず確認しましょう。

まとめ

本記事では、僻地などにおける医師不足を解消する目的で各地方の大学において取り入れられている「地域枠制度」について解説してきました。
地域枠制度には、学費が抑えられることによる家計への負担軽減や入学への有利性、また医師国家試験における高い合格率などのメリットがあり、経済的な面から医学部を諦めていた方には魅力的な制度であるといえます。
その一方で、奨学金返還の義務やキャリアおよびライフイベントへの影響など、卒業後の人生に大きな制限が必ずついてきます。
よって、安易に地域枠制度の利用を決定するのではなく、長い目で自身の人生設計を俯瞰的に考えるようにしましょう。

記事一覧はこちら