医学部の集団面接や集団討論の対策法とは?出題テーマや注意点、実施大学についても解説
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カテゴリ:勉強・対策
医学部の入試では、集団面接や集団討論が課せられる大学があります。
医学的なテーマを問われることが多く、集団面接や集団討論のテーマや評価ポイントについての知識を事前に深めておくことが大切です。
この記事では、医学部の集団面接や集団討論の対策を解説します。
形式の違いや実施大学、よく出題されるテーマ、評価ポイントなどを紹介しますので、医学部の集団面接対策を考えている場合は、ぜひ参考にしてください。
医学部受験の集団面接や集団討論とは
まずは、集団面接や集団討論について解説します。
集団面接と集団討論の違い
集団面接は、面接官が複数の受験生を同時に面接する形式です。
この形式では、面接官が受験生に質問を投げかけ、受験生が順番に回答します。
限られた時間のなかで自己アピールをする必要があり、他の受験生と同じ空間で面接を受けることから緊張やプレッシャーを感じてしまい、普段の実力を発揮できないこともあります。
集団討論は数名のグループで特定のテーマについてディスカッションを行うことです。
ディスカッションのなかで司会役や書記、タイムキーパーなどの役割分担がなされることもあります。
集団討論では、さまざまな意見が飛び交うため、自分とは異なる意見に対して上手く処理し、論理的に意見を組み立て、議論を進める必要があります。
医学部入試における集団面接・討論の位置づけ
医学部入試において集団面接を行う理由は、自己紹介や志望動機などを述べる際に、他の受験生がいる場で緊張やプレッシャーに対処し、自分の意見や考えを簡潔に自信をもって表現することができるかといった医師としての自己表現能力を判断することです。
集団討論を行う理由は、医師は患者や多職種とチームワークを発揮しなければいけない場合も多く、集団討論を通して他者の意見を取り入れつつ自分の意見を述べ、意見の方向性を一致させ問題解決へと向かうことができるのか観察しています。
医学部入試における集団面接や集団討論では、学力試験だけでは測ることのできない、人間性や社会性、協調性といった評価を行うために実施されています。
一般的な時間配分と流れ
集団面接の場合、4〜5人の受験生が同じ空間で一斉に面接が行われます。
面接官から志望動機や医師を志した理由、これまでの活動、将来どのような医師になりたいかなどの質問が問われ、これらに対して各受験生が5〜10分程度で質問に答えます。
質問はグループ全体に向けて問われることもあれば、一人一人に個別に投げかけられることもあります。
集団討論の場合、議題が与えられ4〜5人ごとのグループで受験生は20〜30分程度討論を行い、結論を導きます。
大学によっては、司会役などを決めなければいけないこともあります。
討論を行っている間は基本的に試験官が話すことはありません。
評価のポイントと面接官の視点
集団面接では、自分の考えを論理的に分かりやすく表現することができるか、自己表現能力があるか、医師として患者と接するためのコミュニケーション能力があるか、言葉遣いや態度から医師としてふさわしい倫理観や人間性を兼ね備えているかなどが評価されます。
集団討論では、討論のなかで他の受験生と意見を交換し、協力して問題解決に向けて進められるかが評価のポイントになります。
適切なタイミングで発言を行えているか、意見が対立した際に冷静に意見を調整することができているか、リーダーシップをとることができているかが重要になります。
集団面接・集団討論を実施する医学部大学リスト
次に、集団面接・集団討論を実施する医学部大学リストを説明いたします。
国立大学医学部
まず、国公立大学医学部で集団面接・集団討論を行う学校をご紹介いたします。
大学名 | 面接形式 |
---|---|
旭川医科大学 | 集団面接、集団討論 |
群馬大学 | 集団面接 |
山梨大学 | 集団面接 |
信州大学 | 集団面接 |
岐阜大学 | 集団面接、集団討論 |
名古屋市立大学 | 集団面接、集団討論 |
富山大学 | 集団面接、集団討論 |
滋賀医科大学 | 集団面接、集団討論 |
徳島大学 | 集団面接 |
香川大学 | 集団面接、個人面接、集団討論 |
前期日程で実施する大学
上記の集団面接・集団討論を行う国公立大学医学部のうち、前期日程で実施する学校は、旭川医科大学、群馬大学、名古屋市立大学、富山大学、岐阜大学、滋賀医科大学、信州大学、徳島大学、香川大学です。
その中でも、旭川医科大学、岐阜大学、名古屋市立大学、富山大学、滋賀医科大学、香川大学では、集団討論も実施されています。
後期日程で実施する大学
上記の集団面接・集団討論を行う国公立大学医学部のうち、後期日程で実施する学校は、旭川医科大学、富山大学、山梨大学、岐阜大学です。
旭川医科大学と富山大学と岐阜大学は前期でも実施されています。
また、旭川医科大学、富山大学、岐阜大学では集団討論も実施されています。
私立大学医学部
次に私立大学医学部で集団面接・集団討論を行う学校を紹介いたします。
大学名 | 面接形式 |
---|---|
自治医科大学 | 個人面接、集団面接、集団討論 |
日本医科大学 | 個人面接、集団面接、集団討論 |
東邦大学 | 集団面接、集団討論 |
北里大学 | 集団面接 |
金沢医科大学 | 集団討論 |
大阪医科薬科大学 | 集団面接 |
福岡大学 | 集団面接、集団討論 |
一般入試で実施する大学
上記大学すべてで、一般入試に集団面接を行っています。
その中でも東邦大学、日本医科大学、自治医科大学、金沢医科大学、福岡大学では、集団討論も行っています。
面接時間は各学校によって異なるため、受験を検討している学校があれば各学校のHPをご確認ください。
推薦入試で実施する大学
大阪医科薬科大学では公募制推薦入試や一般選抜でも面接を行っています。
私立大学医学部の推薦入試内容は学校によって、対象者のみ募集要項・受験内容を公開している場合も見受けられました。
推薦入試での私立大学医学部の受験を検討している方は、各学校に問い合わせすることをおすすめいたします。
よく出題される医療テーマと社会問題
次に、集団面接・集団討論でよく出題される医療テーマや社会問題について解説いたします。
医療倫理に関するテーマ
集団面接・集団討論では、尊厳死や安楽死、臓器移植、出生前診断などの医療倫理に関係する内容が出題されるケースが多いです。
医療倫理に関わる内容を出題することで、医師になるためにふさわしい思想を持ち合わせているかをチェックしています。
ここではそれぞれの内容に合わせて詳しく解説していきます。
尊厳死・安楽死
最近、日本でも尊厳死・安楽死について議論がかわされる場面が増えており、医学部の面接や討論でもテーマに出てくることがあります。
まず、尊厳死と安楽死の違いについて把握しておくことが大切です。
また尊厳死・安楽死ともに法律では認められていないこと、賛成か反対かなどの単純な判断はできないことを踏まえつつ意見を述べるようにしましょう。
臓器移植
臓器移植などの移植医療は、難治性の病気を治療することができる手段として非常に重要ですが、問題も抱えています。
移植臓器の提供数が少なく臓器移植を待つ患者が多い問題や、倫理的な問題も残っています。
臓器移植の重要性と今抱えている問題の解決策などについて意見をまとめておきましょう。
出生前診断
出生前診断は、妊娠中に胎児の異常や健康状態を調べるものです。
日本では、出生数が減っているにも関わらず診断を受ける割合は年々増えており、特に40代では6割もの妊婦が診断を受けています。
出生前診断を受けることで事前に不安を取り除けるメリットはありますが、身体的なデメリットや命の選別に関わる倫理的な問題を含むことも理解したうえで、意見をまとめておきましょう。
医療制度・政策に関するテーマ
集団面接・集団討論では、医師不足の問題、地域利用の課題、医療費の問題などの医療制度や政策に関係する内容も出題されることが多いです。
医療制度に関わる内容を出題することで、医師になる者としてどのような考えを持っているのかチェックしています。
ここではそれぞれの内容に合わせて詳しく解説していきます。
医師不足問題
日本では少子高齢化が進み、医師不足問題が懸念されています。
実際すでに都市部に比べて地方での医師不足が深刻な問題となっています。
そういった現状の把握と原因、解決策について自分なりの意見を述べられるように準備しておきましょう。
地域医療の課題
地域医療の医師不足は深刻な問題です。
医学部の地域枠制度は、2010年に医師不足地域の医療確保を目的として作られ、今では全国の9割の大学で導入されています。
受験している大学の地域にどのような課題があるかを踏まえて意見を述べるようにしましょう。
医療費の抑制
人口の高齢化が進む中で医療費が増加し、それに伴い保険料が上昇し企業の負担が大きくなっています。
そのため医療費の抑制政策が掲げられています。
医療費の抑制に繋がる内容や、個人で医療費の負担を軽減する方法など、理解しておきましょう。
最新の社会問題
集団面接、集団討論では、最新の社会問題や医療にまつわる問題、例えば新型感染症やAIについて出題される傾向があります。
最新のニュースや先進医療についてなど幅広く興味をもち、自分なりの意見を持っておきましょう。
新型感染症対策
20世紀になり、ワクチンや抗生剤の開発により感染症は制圧できたと言われていましたが、2020年の新型コロナを始め、新型感染症の出現が目立っています。
世界的な新型コロナパンデミックから、ワクチンの必要性や院内での感染対策についてなど、意見をまとめておきましょう。
AI・ロボット技術の医療応用
現在、AIの進化は留まることを知りません。
医療の分野も同じく医療AIはどんどん実用化されています。
特に画像診断の分野においての進歩は目覚ましいものがあります。
また、ロボット技術においても、医療者の負担を軽減できるメリットがあります。
AIやロボット技術の医療応用についての現状の基礎知識は、必ず覚えておきましょう。
その上でそれらとの共存や未来の展望など、自分なりの意見を用意しておくことが必要です。
少子高齢化社会における医療
少子高齢化社会における医療に関しての認識や意見は、かなりの頻度で問われる問題です。
少子高齢化社会における医療のテーマは、現在の社会問題だけでなく、医療制度の問題、医療倫理の問題としても繋がっているテーマですので、必ず自分なりの意見を、簡潔に述べられるようにしておきましょう。
医学部受験における集団面接・集団討論の対策
医学部受験における集団面接・集団討論の対策のポイントについて詳しく解説します。
発言の仕方と内容
集団面接や集団討論の場合、つい自己アピールをしようとして長々と話してしまう人が多いです。
しかし、それは協調性に欠ける、自己中心的といった評価に繋がりかねません。
集団の場合は特に、自分の意見を簡潔にまとめることを意識して発言しましょう。
集団面接の場合、自分が発言しようとした内容を前の人に話されてしまい、パニックになる人もいますが、同じ内容を発言したからと言ってマイナスにはなりません。
自分自身の言葉で、発言するように心がけましょう。
論理的な意見を組み立てる
与えられたテーマに対して、論理的な意見を組み立てられているかどうかは、チェックされるポイントです。
特に集団討論では、決められた時間内に与えられたテーマの議論を展開していかねばなりません。
他者の意見も聞いたり導き出したりしなければならないので、自分の意見は、支離滅裂にならないように簡潔にかつ論理的に組み立てて置く練習をしましょう。
他者の意見を踏まえた発言をする
集団討論では、自分の意見を押し通せば良いというものではありません。
コミュニケーション能力・協調性なども試されていますので、他者の意見を踏まえつつ発言するようにしましょう。
自分と真逆の意見だったり挑発的な意見に対して感情的にならないように気を付けましょう。
適切な発言量とタイミング
集団討論の場合、発言量とタイミングも重要です。
自分の意見ばかり述べるのではなく、他の学生の意見を拾ったり、発言が少ない人に対してフォローすることも大切です。
討論するグループ自体が盛り上がるように雰囲気を見ながら発言しましょう。
集団討論の場合、決められた時間の中で、与えられたテーマに対し議論を深め分析し、集団の意見をまとめて結論を出さなければなりません。
その中で、自分の意見を整理しつつ、タイミングをみて簡潔に発言しましょう。
志望動機を磨く
集団面接や個人面接では、ほとんどの大学で志望動機を聞かれます。
「親が医師だから」という受動的な理由は、面接官に良い印象を与えません。
きっかけはそうだったとしても、なぜこの大学に受験するまでに至ったのか、自発的にどうして医師になりたいと思ったのかなど、自分の経験に基づいた発言をしましょう。
その大学の特色をからめて自分がその大学でなにをしたいのか、自分の未来像や希望の診療科など、具体的な展望を発言するのも良いでしょう。
医師としての適性をアピールする
面接官は、面接での発言や態度を見て、医師としての適性があるかどうかを判断します。
一般的に医師に向いていると言われるのは、まず体力があることです。
勤務医や緊急医療に携わる場合は、休む暇がないと言われるほどです。
次に、メンタルが強い事です。
人の生死に関わる仕事であるため、精神的に強くないと辛い仕事です。
また、外科医の場合は長時間の手術を行うこともあるため、集中力があることも大切です。
次に、コミュニケーション能力も必要です。
病院は看護師や薬剤師など、たくさんの職種の人と連携をとって患者の治療にあたります。
また、患者本人や患者の家族との対話も必要になってきます。
さらに、医療の現場では想定外のことが起こります。
落ち着いて臨機応変に対応できる能力も必要となります。
これら全てを網羅することはできないとしても、いくつか自分に当てはまる部分があれば、それを自分の実体験を通じて説明しアピールする練習をしてみましょう。
コミュニケーション以外の対策
ここまで、集団面接・集団討論での発言やコミュニケーションに関するポイントについて説明しましたが、面接官に与える印象は、発言内容やコミュニケーション能力だけではありません。
ここからは、コミュニケーション以外の対策について解説します。
姿勢や表情、声のトーン
面接官と受験生は初対面同士です。
あなたが初対面の人と接する時に、その人と話す以外に何を見て感じてその人の印象が変わるかを考えてみましょう。
まず、面接室に入ってきたときの姿勢や表情が大切です。
「人は見た目が9割」という本がありましたが、9割とまではいかなくとも、最初に見たときの印象は大きいものです。
猫背より姿勢の良い学生の方が、自信に溢れ礼儀正しく感じますし、暗い表情よりも明るい表情をしている方が好印象なのは言うまでもありません。
また、声のトーンも大事です。
面接時は緊張するものですから、声が小さくなったり早口になってしまいがちですが、落ち着いてゆっくりハキハキと答えるように心がけましょう。
アイコンタクトの取り方
患者の目を見ずに診療を行う医師のことをどう思いますか?そんな医師には、かかりたくないものです。
面接官に会ったら、まずはアイコンタクトが基本です。
面接官が複数の場合は、質問を出した面接官を見るようにしましょう。
集団討論の場合は自分の意見を述べるときは、グループのみんなの目を見て発言することで説得力が増します。
また他者が話すときは、その人の目を見るようにしましょう。
他者に対しての敬意があるかどうかも面接官はチェックしているものです。
模擬面接を利用する
集団面接・集団討論を上手く乗り切るには、模擬面接を行うのが一番の近道です。
高等学校では、そこまでのフォローを行う所は少ないですが、予備校などでは面接対策を行っています。
他の受験生と共に模擬面接を行うなど、本番を意識した状態で行うようにしましょう。
まとめ
今回は医学部の集団面接についてご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。
医学部の集団面接や討論はテーマが医療の話題になることも多いです。
そのため、普段からニュースなどを見ておくことも非常に重要です。
特に、集団面接を控えている方は今回の記事を参考にして集団面接を成功させましょう。
この記事の執筆者:医進の会代表 谷本秀樹

大学入試は四谷学院などの大手予備校や多くの医学部受験予備校で、主に生物の集団授業と個別授業で300人以上の受験生を担当。
自身の予備校『医進の会』発足後は、これまで500人以上の生徒の受験と進路指導に携わってきた。
『個別の会』の代表でもあり、圧倒的な医学部入試情報量と経験値、最適なアドバイスで数多くの受験生を医学部合格に導いてきた、医学部予備校界屈指のカリスマ塾長。