医学部の実習はどれくらいきつい?実習の種類やよくある話について解説
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カテゴリ:基礎知識
医学部の実習は「きつい」と良く聞きますが、どのくらいきついのでしょうか?
なぜ、きついと言われるのでしょうか?
ただ「きつい」と聞くだけでは不安になる方も多くいるのではないでしょうか。
本記事では医学部の実習のきつさやきつい理由を詳しく解説しています。
記事内ではきついと言われる医学部の実習を乗り越える方法や,実習でよくある話についても解説しております。
医学部に入りたい方や実習が迫っている方は是非参考にしてください。
医学部の実習とは?
医学部の実習と言えば「人体解剖」や「病院実習」がすぐに思い浮かびますが、それだけではありません。
その他にスケッチ実習や科目ごとの実習など幾つもの実習があります。
また医学に関することだけではなく、全く関係ない実習まで用意されています。
主な実習について解説していきます。
スケッチ実習
低学年で特に重要視されるのが、スケッチです。
写真では表現できない部分の表現をするためであったり、細部まで正確に見られるようになるために顕微鏡で見た細胞や解剖した動物のスケッチを行います。
実際に顕微鏡を覗き、色鉛筆でスケッチをします。
初めは染色体や細胞小器官等細胞の中に存在するミクロのスケッチを行い、学年が上がるにつれ皮膚や臓器等のマクロの断片の標本のスケッチを行うようになります。
その他病気になってしまったものをスケッチします。
スケッチ実習は手を動かし、顕微鏡を操作し、何種類も行わないといけないため、とても大変な実習です。
解剖実習
解剖実習では、人体の構造を直接観察し、理解を深めるための具体的な作業を行います。
まず、外観の観察から始め、人体全体の形状や各部位の位置関係を把握します。
その後、皮膚を慎重に切開して取り除き、筋肉、血管、神経などを観察します。
これにより、筋肉の構造や働き、血管や神経の走行を詳細に学ぶことができます。
さらに、胸部や腹部を開き、心臓、肺、胃、肝臓、腎臓などの内臓を一つずつ取り出して観察し、それぞれの臓器の位置や機能、相互のつながりを確認します。
これらの作業を通じて、解剖学の知識を実践的に学ぶと同時に、献体者への感謝の気持ちを持ちながら医学的な理解を深める重要な機会となります。
臨床実習
臨床実習では、医療現場において患者さんの診療に直接関わりながら、医学の実践的な知識や技術を学びます。
医学生は医師の指導のもと、患者さんの病歴聴取や身体診察を行い、診断や治療の流れを体験します。
また、検査結果の読み取りや診療記録の作成など、医療チームの一員としての役割を学びます。
診療科ごとの特性に応じて、外科手術の見学や補助、内科での問診や投薬管理の理解など、幅広い経験を積みます。
さらに、患者さんとのコミュニケーションを通じて医療倫理や共感の姿勢を養います。
この実習を通して、座学で得た知識を実践に結びつけ、将来の医師として必要な総合的な能力を身につけることが目的です。
そのほかの実習
医学部では、スケッチ実習、解剖実習、臨床実習のほかにも多岐にわたる実習が行われます。
例えば、病理学実習では、顕微鏡を使用して組織や細胞の異常を観察し、病気の原因や進行メカニズムを学びます。
生理学実習では、心拍数や呼吸、筋肉の動きなど生体機能を測定し、正常な体の働きを理解します。
シミュレーション実習では、専用の人形やシミュレーターを使い、心肺蘇生や注射、縫合などの基本的な医療技術を反復練習します。
また、コミュニケーション実習では模擬患者を相手に問診や説明の練習を行い、患者さんとの関係構築スキルを磨きます。
これらの実習を通じて、医学の知識と技術、そして医療者としての姿勢を総合的に習得します。
医学部の実習はきついのか?
医学部の実習はきついのかについて詳しく解説していきます。
基本的に忙しくて遊べない
医学部の実習は非常に忙しく、遊ぶ時間がほとんど取れないとよく言われます。
特に臨床実習の段階になると、早朝から病院に出向き、患者さんの診療補助やケーススタディに取り組むため、体力的にも精神的にも大きな負担がかかります。
また、解剖実習や病理学実習なども事前準備やレポート作成が求められ、学ぶべき内容の多さから自由な時間を確保するのが難しい状況です。
さらに、試験や国家試験の勉強が並行して行われるため、医学生の生活は常に学業中心になります。
しかし、その分得られる知識や技術、医療現場での実践的な経験は大きな財産となります。
また、時間が限られる中でも効率的に勉強し、仲間と協力することで、忙しい生活の中に達成感や充実感を見出す学生も多いです。
そのため、「遊べない」という印象はありますが、それを補う価値ある学びの時間ともいえます。
学習量が多い
医学部の実習では、膨大な学習量が求められます。
実習中には、患者さんの診療や手技の練習に取り組むだけでなく、関連する知識を深めるための予習や復習も欠かせません。
例えば、臨床実習では診察や検査の流れを学びながら、各症例に関連する疾患の病態、治療法、薬物療法などを理解する必要があります。
また、解剖実習では人体の構造を詳細に学ぶだけでなく、それに基づくレポート作成も求められます。
さらに、病理学や生理学の実習では、組織や細胞の観察結果を分析し、まとめる力が必要です。
これらに加えて、国家試験の範囲となる幅広い知識を並行して学ぶ必要があるため、日々の学習時間は非常に膨大です。
しかし、この過程を通じて、医療の現場で求められる知識やスキルを体系的に身につけることができます。
忙しい中でも効率的に学ぶ工夫が求められますが、その努力は将来の医師としての責任ある仕事につながります。
実習の数が多い
医学部では、多岐にわたる実習が行われ、その数の多さが特徴です。
解剖実習や病理学実習のように基礎医学を学ぶ実習から、臨床実習、コミュニケーション実習、シミュレーション実習まで、医学生は幅広い分野で実践的な経験を積む必要があります。
解剖実習では人体の構造を深く学び、病理学実習では病気の原因を組織や細胞レベルで探求します。
さらに臨床実習では実際の医療現場で診察や検査、治療の流れを体験し、シミュレーション実習では注射や縫合などの基本的な医療技術を反復練習します。
これに加え、模擬患者を用いたコミュニケーション実習では、患者さんへの説明や問診のスキルを向上させます。
各実習では事前の準備やレポート作成が必須で、時間と労力がかかりますが、実際の医療現場で必要な知識や技術を確実に身につけるために重要です。
多くの実習を通して、医学生は理論と実践を結びつけ、医師としての基礎を築いていきます。
テストの数が多い
医学部では、テストの多さが大きな特徴であり、学生にとって大きな負担となります。
テストは学年を通じて頻繁に実施され、解剖学や生理学、病理学などの基礎医学の科目から、薬理学や臨床医学といった応用的な科目に至るまで、幅広い分野にわたります。
これらのテストでは、膨大な量の知識を正確に理解し、記憶するだけでなく、臨床場面で応用できるかが問われます。
また、学年末には総合的な実力を測る大規模な試験が行われ、さらに卒業後には医師国家試験という最終目標が控えています。
テスト前には長時間の勉強が必要で、加えて実習やレポート作成などの日常的な学業との両立が求められるため、スケジュールは非常にタイトです。
しかし、こうした厳しい環境で知識を積み上げることで、医師としての基礎的な能力が養われます。
多くの試験を経験することは、大きな負担である一方、医療の現場で役立つ知識と判断力を身につける貴重な機会ともいえます。
自由時間が少ない
医学部の実習では、学習内容の多さと実習の密度の高さから、自由時間が非常に短いのが特徴です。
特に臨床実習では、早朝から病院に行き、患者の診療に参加したり、症例の確認や診断を行うため、昼食時間を取るのも難しいことがあります。
解剖実習や病理学実習、シミュレーション実習などでは、事前準備や後片付け、レポート作成が必要で、実習後に自由時間を確保することが困難です。
また、国家試験に向けての勉強や試験対策も並行して進めなければならず、学業に追われる日々が続きます。
このため、学業と実習の合間に短い時間を使ってリフレッシュすることが求められるものの、時間的な余裕はほとんどありません。
学生生活全般においても、友人と遊ぶ時間や趣味に費やす時間が限られ、日々の生活が忙しさに追われがちです。
しかし、これらの多忙な日々は医師としての責任を果たすための大切な準備期間であり、限られた時間の中で効率的に学ぶ力を養うことが求められます。
医学部の実習を乗り越える方法
医学部の実習を乗り越えるためのポイントは、計画的な学習、効率的な時間管理、そして精神的な柔軟性が重要です。
まず、計画的な学習が不可欠です。
医学部の実習では、学ぶべき知識が膨大であり、実習の前後に必要な予習や復習を行うことが大切です。
効率的に学ぶためには、試験の範囲や実習の内容を把握し、優先順位をつけて計画的に進めることが重要です。
また、実習に必要な手技や知識は繰り返し学ぶことで身につくため、日々の学習に少しずつ時間を割いておくことが助けになります。
次に、効率的な時間管理が求められます。
実習が忙しくなると、勉強時間を確保するのが難しくなりますが、無駄な時間を減らし、少しの隙間時間でも効率よく学べる工夫が必要です。
例えば、移動中に音声教材を聞いたり、実習後に少しだけでも振り返りをすることで、知識を定着させることができます。
また、友人と一緒に勉強したり、チームで意見交換をすることで、理解を深めることも有効です。
さらに、精神的な柔軟性を持つことも大切です。
医学部の実習は、知識や技術の習得だけでなく、精神的な強さも必要です。
思うようにいかないことや疲れがたまることもありますが、ポジティブな思考を保ち、柔軟に対応することでストレスを軽減できます。
自分自身のペースを大切にし、無理をしすぎないようにすることも重要です。
時には休息をとり、リフレッシュすることも乗り越えるためには不可欠です。
実習は厳しい部分もありますが、計画的に学び、効率よく時間を使い、柔軟に対処することで、乗り越えることができます。
そして、その努力は医師としての基盤を築く貴重な経験となります。
医学部の実習でよくあるポイント
次に、医学部の実習でよくあるポイントについて解説していきます。
スケッチ実習が重要
医学部のスケッチ実習は、医学的な知識を深め、医師としての能力を育むために重要なプロセスです。
スケッチ実習が重要とされる理由として4つが挙げられます。
まず1つ目は、観察力が向上する点です。
顕微鏡下での微細な構造や、解剖実習での臓器の複雑な形状などを紙状に描くだけでなく、3次元の構造を2次元の紙上に表現する必要があるので観察力の向上に繋がります。
2つ目は、記憶力の定着に繋がることです。
文字や図などでは理解しにくい複雑な構造も、自分で描いたスケッチを確認することでより鮮明に記憶に残ります。
3つ目は、表現力が向上することです。
スケッチは医学的な知識を正確かつ簡潔に表現する訓練になります。
表現力は、将来、患者さんに病気を説明したり、他の医療従事者と情報を共有したりする際に不可欠となる能力です。
最後の4つ目は問題解決能力が育成されることです。
スケッチを通じて、対象物の構造を深く理解することができます。
この理解に基づいて、病気の原因や治療法を考察する力が養われます。
また、スケッチは観察結果に基づいて仮説を立てるので、それを検証するプロセスを促します。
このプロセスが科学的な思考方法の基礎となります。
これらの理由によりスケッチ実習は重要とされているので、意欲を持って取り組みましょう。
レポートの点数の付け方がよくわからない
医学部のレポートの採点基準は、大学や教授によって異なるため、一概にこうだとは言えず、どのような点を評価されているのか分からないと思う学生や、自分の努力が報われないと感じる学生が多いです。
レポートの点数が低ければ、周りの学生と自分を比較してしまい、劣等感を感じてしまう事や、将来本当に医師になれるのかと不安に感じてしまうこともあります。
医学部生は皆、高い目標を持って日々努力しており、その中で自分の成長を実感したいと考えているため、これらの悩みを抱えるのも皆同じです。
点数に一喜一憂するのではなく、レポート作成を通して得られるものを考えてみることを大切にしましょう。
被験者になることがある
医学部の実習で被験者になることがあるというのは非常に一般的なことです。
これは医学部教育において、自ら経験することでより深い理解を得るという目的があるためです。
心電図や脳波といった検査を自分自身で行うことで、教科書で学んだ知識をより理解することができ、身体の構造や機能の理解を深めることができます。
また、実際に検査や治療を受けることで、患者さんの気持ちや医療行為の意義の理解を深めることに繋がります。
医学部生が被験者になることは単なる実験ではなく、将来の医師として成長するための重要な経験です。
少し不安に感じる人も多いと思いますが、積極的に参加することでより深い学びを得ることができるでしょう。
班で頼れる人がいないと困る
実習中は、予想外の事態が発生したり、課題に直面したりすることがあります。
そういった場面で、冷静に対処し適切な解決策を導き出すことができる人がいると、実習が滞りなく進みます。
また、実習中は不明点や疑問点がたくさん出てきますが、班に頭がよく頼れる人がいれば疑問点を解決してくれることもあります。
これらの理由により、班で頼れる人がいないと困ると思う学生は多いですが、頼れる人がいない状況だからこそ、自ら積極的に行動し学ぶ姿勢を持つことが大切です。
高価なものへの意識が高い
医学部の実習では、高価な器具や機器を扱う機会が多いです。
高価な器具や機器を扱うということは、実習の質を保ち、慎重に取り扱う意識と故障や不具合を防ぐための責任も伴います。
そして、最終的には患者への安全な診療を実現するために非常に重要であるといえます。
医学部では、学生に対して器具や機器を適切に使用するための教育が行われ、これにより、学生たちは高価なものを正しく使用することの重要性を認識します。
取扱いの前には基本的な知識を身につけ、必ずマニュアルを読み、使い方を理解しておくことが大切です。
実際に使用するときは、特に手元に注意を払い、慎重に扱うよう心がけましょう。
優しい先生がいることも
最後に医学部の実習において、優しい先生がいることは学生にとって非常に大きな支えとなります。
優しい先生は、学生が学びやすい環境を作り、学問や技術の習得をサポートするだけでなく、精神的な安心感を与え、成長を促します。
学生が間違えた場合にも優しく、また、具体的で適切なフィードバックを行います。
批判的にならず、次にどうすれば良いかを丁寧に指導してくれるため、学生は改善に向けて努力しやすくなります。
学生が自信を持って学び、成長できる環境を提供してくれる優しい先生の存在は、実習の成果を最大化するために不可欠だといえます。
まとめ
今回は医学部の実習のきつさやきつい理由、医学部の実習を乗り越える方法や実習でよくある話などについて解説しましたが、いかがでしたでしょうか。
医学部の実習は非常にハードで、学生にとって体力的・精神的に大きな負担となることが多いです。
しかし、医療現場での実践的な学びは、知識だけでなく、技術やコミュニケーション能力を実際に身につけるために必要です。
実習を乗り越えることで医師としての成長や実践力が高まりますので、実習の先にある成長を信じて、前向きに取り組んでいきましょう。
本記事を読んで少しでも参考になりましたら幸いです。
この記事の執筆者:医進の会代表 谷本秀樹
大学入試は四谷学院などの大手予備校や多くの医学部受験予備校で、主に生物の集団授業と個別授業で300人以上の受験生を担当。
自身の予備校『医進の会』発足後は、これまで500人以上の生徒の受験と進路指導に携わってきた。
『個別の会』の代表でもあり、圧倒的な医学部入試情報量と経験値、最適なアドバイスで数多くの受験生を医学部合格に導いてきた、医学部予備校界屈指のカリスマ塾長。