医学部を卒業しても医者にならない人はいる?医者以外の選択肢やキャリアの選択を解説
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カテゴリ:基礎知識
本記事では医学部を卒業しても医者にならない人はいるのか解説します。
中には医者にならない人もいるため、どのようなキャリアの選択肢があるのかも詳しく解説します。
記事内では医師にならなかった著名人も解説しているため、是非参考にしてください。
目次
医学部を卒業しても医者にならないのは普通なのか?
医学部を卒業して、医者にならない人はいるのか、医者にならない人がどの程度いるのか、なぜならないのかについてまとめてみました。
医学部を卒業しても医者にならない人はいる
医学部を卒業しても医者にならない方は一定数います。
国家試験に合格した場合、多くの人はそのまま研修医として2年間の臨床研修を行います。
そこでの研修が終われば、勤務医・開業医としてキャリアを築いていくことができます。
しかし、医師国家試験に合格し、研修医にならずに違う道を進む人もいます。
他にも国家試験に合格できずにやむをえず医師にならない方もいます。
医学部卒業後に医者にならない人の割合は?
医学部卒業後に医者にならない方の割合としては、20人に1人はほかのキャリアに進んでいることが分かります。
医師国家試験の合格者が従事する施設で最も多いのが、病院・診察所で働く医師です。
一方で、医者にならない選択肢として、行政機関での公務員が代表例です。
医師国家試験合格者全体の0.5%が該当しています。
また、他にも医師を養成する機関ではないところで教育や研究に就業する人が0.5%、医療・医学とは全く関係のない業務を選択する人が0.2%となっています。
医師国家試験に合格しても一定数は、別のキャリアを歩んでいることが分かります。
医学部を卒業して医者にならない理由とは?
医学部を卒業して医者にならない人は一定数いますが、その事情について理解しておきましょう。
人それぞれの目的・理由・考えがありますが、今回はよくある3つの理由をご紹介します。
ほかに興味のあることができたから
1つめはほかに興味のあることができたからです。
最も多いのが医学部に入学後キャリアの選択肢が広がるという事です。
最初は医師を目指し入学しましたが、医学部では入学後さまざまな実習やボランティアに参加する機会があります。
そのため、介護系の事業所、医療現場以外の福祉などに実際に目にして興味をもっていったということが考えられます。
医学部の勉強内容が思ったものと違った
2つ目が医学部の勉強内容が思ったものと違ったというケースがあります。
医学部は命を預かる職業であるため、勉強する内容や範囲が膨大な量になっています。
医学部生は日頃から時間を勉強に割いています。
そのため、想像していた学問とのギャップを感じやすいのです。
その結果、キャリアプランを変更し、医師にならないという選択を取ります。
医師国家試験に合格することを目指しますが、医師という選択肢をやめるという形になります。
医師国家試験を受験するには、医学部の卒業が必須です。
そのため、このような選択肢を取って逆に残りの生活のモチベーションにしています。
そもそも医師になりたいと思っていなかった
3つ目は、そもそも医師になりたいと思っていなかったケースです。
医学部を卒業後、医者にならずに医者以外の道に進む方もいます。
一部の医学部生の方は、非常に高い学力を持っていて、医学部受験の動機が力試しであった場合、医師という職業に関心を持たないことがあります。
医学部に進学した後のキャリアは医師だけに限られておらず、さまざまな道があります。
実際に、医学部で学んだ広範な知識と技能を別の分野で生かし、活躍している方々がいます。
医学部を卒業して医者にならなかった例
ここでは、医学部を卒業して、医師ではない職業を選択された方々の例をご紹介します。
宇宙飛行士 古川聡さん
1人目は、宇宙飛行士の古川聡さんです。
古川さんは東大医学部出身で、消化器外科医として10年間従事した後宇宙飛行士に転身されています。
現在は、医師と宇宙飛行士としての経験を生かし、宇宙医学の分野で活躍しています。
10年間医者として働いていても、一生医者で生涯を終えると決まったわけではなく、新たな挑戦で自らの未来を広げていくことが可能です。
衆議院議員 あべともこさん
2人目は、衆議院議員の阿部知子さんです。
阿部さんは東大医学部出身で小児科医として働きはじめ、20年以上医師としてのキャリアを積み、病院長にまでなりました。
その後、国会議員となり、国民の声を政治に反映させるために現在も活動しています。
将来の夢を聞かれたときに、「医者になりたい」「政治家になりたい」と答えた方がほとんどです。
しかし、医学部卒業後の人生はとても長いです。
職業をたった一つに絞る必要はありません。
政治家になるために法学部や政治経済学部を選ぶ人は多いですが、「政治を学ぶ」学部出身ではない政治家も少なくありません。
医師として患者さんと接してきた経験が政治家として活きることも十分あり得ます。
河野玄斗さん
3人目は河野玄斗さんです。
河野さんは東大医学部に在学しながら司法試験に合格したことでメディアに取り上げられるようになり、一躍有名人となりました。
その後は、高校生向けにオンライン授業を発信するサービスを立ち上げ、教育系アプリのリリースや、Youtuberとして活動を行っています。
医師免許を取得後も教育活動を続けています。
「医学部を卒業したら医師になる」という固定概念にとらわれず、自分がやりたい事を追究し続ける人生もあります。
河野さんはもともと医者になりたかったわけではないと公言しており、医学部に進んだのは医者と弁護士両方の資格を持つ【自分にしかできないことがしたい】、そして司法試験合格後の人生が想像できないからこそ魅力がある、と理由だそうです。
医者になりたいからという理由ではなく「面白そうだから」という理由で医学部に進学してもいいんです。
マイシンCEO 原聖吾さん
4人目は、マイシンCEOの原聖吾さんです。
原さんは、「年をとっても楽しく仕事がしたい」という思いからアーティストになることも考えましたが、両親共に医者であったことから東京大学理科三類に進学し、医師となりました。
しかし、実際に実習を通してみる医療の現場は過酷なもので、医師が必死に寝る間も惜しんで働いているにもかかわらず、医療過誤やたらい回しといったことが常態化しているのを目の当たりにし、一臨床医としての限界を感じるようになりました。
そこでデジタル技術で医療問題を解決することができるのではないかと考え、オンライン診療を行うマイシンを起業しました。
このように一度医師として働く中で自分が本当にしたい事をみつける方もいます。
医学部卒業後のキャリア選択肢
医学部を卒業しても、医師にならないという選択肢もあるという事を上記で述べました。
ここでは医師国家試験に合格したけれども、医師とは違った職業につくということを紹介したいと思います。
医系技官
医系技官とは、厚生労働省管轄の組織に配属され、医師国家資格を持つ人にとっては人気のある職業です。
医系技官の仕事としては、保健医療の制度づくりです。
これは行政官としてハイレベルなマネジメント能力が必須で、国の制度をつくるという大きなやりがいがあります。
そして国家公務員ですので、それも魅力の一つと言えるでしょう。
研究員
研究員の業務とは、専門分野の中で、基礎研究医や臨床研究医として未解明の病気の原因や治療法を解明していくことです。
研究センターや研究所などの法人に就職し、データの収集や解析などをして、医学の発展に向けた研究を行っており、また研究の臨床データ収集として、診療を兼ねる場合もあります。
研究員は科学的な好奇心を満たす道でもあり、自分の強い興味を活かしながら研究をするので医学の新たな一歩を築き上げたいという人にはとても向いていると言えるでしょう。
時給制の求人も多く、家庭と仕事の両立を考えている人にもいいでしょう。
メディカルドクター
メディカルドクターは製薬業界で活躍しています。
メディカルドクターのメイン業務は、新薬開発や販売に関わる医学的な知見の貢献です。
就職先としては一般企業となるので、ビジネスマナーやチームマネジメントといった企業人としてのスキルを強く問われる場合があります。
起業
医師免許という資格を活かし、医療系のベンチャー企業を立ち上げる人もいます。
医療現場やヘルスケアを題材とした、ITサービスや医療系人材のサポートをする企業が多く見られます。
事業が成功すれば医師以上に稼ぐこともでき、もし失敗したとしても医師として再就職することができるので、チャレンジしやすいと言えるでしょう。
教育業界への進出
医学部入試に向けた受験勉強や入学後の学習、医学部生に人気の塾講師、家庭教師アルバイトを通して、「教育」への熱意が高まることも医学部生活では少なくありません。
昔から猛勉強してきたという経験は、市場ニーズの観点からも直結すると言え、未来の医師を教育する立場に魅力を感じる人が選ぶキャリアの一つです。
医者にならなくても医師免許は持っておいた方がいいのか?
ここでは、医者にならなくても医師免許をもっておいたほうかいいのかということについて述べていきたいと思います。
結論:持っておいた方がいい
結論からいうと、医師免許は持っておいたほうがいいと言えるでしょう。
医師国家試験に合格した証となる医師免許は、あらゆる国家資格のなかでも最も信頼度が高いため、医者にならなくても医師免許は持っておいた方がメリットは大きいと言えます。
医者に復帰することができる
厚生労働省の「医師受給分科会」では、医療現場での医師不足が議題とされ、長期的に対策が検討されており、いつでも医師復帰することが可能であります。
万が一の時でも医師という職業に就くことができます。
医師という肩書きを持つことができる
医師免許とは、国家試験に合格したという信頼性の高い国家資格です。
これは保健医療業界に限らず様々な業界においてコネクションを深める上で、医師という肩書による恩恵があります。
医学部がある大学院に進学するという選択肢も
医学部生が大学院に進学するという選択肢もあります。
医学部卒業後、さらに高度な学問を追究することで新たに様々な分野を広げることができます。
大学院に進学するのに、メリットは2つあります。
一つ目は教育者や研究者としてキャリアを積み、博士号を取得出来ることです。
医学部教授を目指すのであれば、博士号取得は必須です。
大学院での研究や学問を通じて、将来的に重要な役割を果たすことができます。
もうひとつは臨床研究医、基礎研究医としてのキャリアを築くことができます。
医療の進歩に貢献することができます。
大学院では、特に臨床医として働きたいと思っている学生にとって、最新の医療知識や技術に触れることができる良い機会になります。
また大学院進学によって、留学の機会も与えられ、世界の医療技術を学ぶ貴重な経験も出来ることがあります。
まとめ
こちらの記事では、医学部に通っていても医師にならない選択肢を取ることについて紹介しました。
医学部に入ってギャップを感じたり、興味を失ってしまっても多くの道があります。
著名人の方々はみな同じ医学部だったとは思えないほど様々な仕事で働いておられます。
医学部に入って勉強についていけるか不安な方や途中でやめたくなってしまいそうと不安になられる方がいらっしゃるかと思われますが、様々な道があるので安心ですね。
医学部受験をお考えの方は、是非他の記事も参考にして下さい。
この記事の執筆者:医進の会代表 谷本秀樹
大学入試は四谷学院などの大手予備校や多くの医学部受験予備校で、主に生物の集団授業と個別授業で300人以上の受験生を担当。
自身の予備校『医進の会』発足後は、これまで500人以上の生徒の受験と進路指導に携わってきた。
圧倒的な医学部入試情報量と経験値、最適なアドバイスで数多くの受験生を医学部合格に導いてきた、医学部予備校界屈指のカリスマ塾長。