研修医とは?研修先の選び方、注意点、専攻医などを解説
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カテゴリ:基礎知識
「研修医とはどんな医師?」「研修先の選び方が知りたい!」「研修開始までの流れは?」
上記のように研修医や研修医制度について疑問点はないでしょうか。
研修医制度は医師としての基礎や基本を身につける内容となっています。
今回は研修医の概要や目的、研修先の選び方などを解説します。
医師を目指す方や研修医について知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
研修医とは?
まずは研修医制度の目的や内容、研修医の年収などを解説します。
研修医についての基本的な内容であるため、しっかりと確認しておきましょう。
目的
研修医制度が整備されている目的は、医師に必要なスキルや能力を総合的につけることです。
厚生労働省は研修医制度の目的を下記のように挙げています。
「臨床研修は、医師が、医師としての人格をかん養し、将来専門とする分野にかかわらず、医学及び医療の果たすべき社会的役割を認識しつつ、一般的な診療において頻繁に関わる負傷又は疾病に適切に対応できるよう、プライマリ・ケアの基本的な診療能力(態度・技能・知識)を身に付けることのできるものでなければならない。」
(引用:厚生労働省「新制度の概要」)
上記の目的を達成するために、研修ではさまざまなプログラムやカリキュラムが組まれています。
そのため、研修医は決して楽なものではありません。
医師としての基礎基本を学んだり、専門医になるための足がかりとなる研修です。
内容
研修医制度においては、医学部がある大学を卒業した後に2年以上の臨床研修が必要です。
臨床研修では下記のような内容があります。
基幹ローテーション
選択ローテーション
自由ローテーション
基幹ローテーションでは内科、救急科、外科、地域医療などから選択して経験を積みます。
選択ローテーションでは、基幹ローテーション以外から診療科を選んで、さらに現場で実務などに取り組みます。
自由ローテーションは、自由に診療科や施設を選んで研修を受ける流れです。
さまざまなローテーションにより診療に必要な能力を身につけます。
ただし、研修を受ける病院のプログラムやカリキュラムによって選択できる内容が異なります。
年収
研修医として勤務する際に気になるのは年収ではないでしょうか。
研修医の年収は平均すると、1年次が約430万円程度、2年次が約480万円程度です。
ただし、これはあくまでも平均であり、研修を受ける病院によって上下します。
給料が高い病院であれば年収650万円程度になることもありますが、低い場合は年収300万円程度の場合も考えられます。
研修医の平均年収は一般的な会社員に比べれば高い傾向にありますが、医師としての負担や責務を考えると十分な給料と言えないこともあるでしょう。
ただし、研修医を終えれば年収も上がるため、研修期間中に専門性のあるスキルを磨くことが必要です。
アメリカや韓国との違い
世界各国で研修医制度(臨床研修制度)には違いがあります。
ここではアメリカと韓国の臨床研修制度を紹介します。
アメリカの研修医制度は医学部を卒業した後、インターンシップとして1年間、主要な診療科を一通り回ることから始まります。
その後、レジデンシーとして3年〜6年の経験を積んで、認定試験を受験します。
認定試験に合格すると、医師としての活動が可能になります。
さらにフォローシップを3年〜10年の期間を経ることで、専門医として高度な医療行為が可能となります。
次に韓国の研修医制度をみていきます。
韓国では医学部卒業と同時に開業が可能となっていますが、臨床研修のプログラムも整備されています。
研修制度はアメリカの制度に準じており、インターンシップ、レジデンシー、フォローシップと流れていきます。
ただし、韓国は19歳〜29歳の間に2年ほどの兵役があるため、兵役終了後に研修に復帰します。
日本の研修制度では2年以上となっていますが、アメリカや韓国は6年以上の研修期間になる点に違いがあります。
また、日本の研修制度ではその期間中にさまざまな診療科をまわりますが、アメリカや韓国では臨床研修中に専門領域を決めて集中的に学ぶ点も違いです。
後期研修医(専攻医)について
研修医制度は初期と後期に分けることができ、先述した研修制度は医師としての基本的な能力を身につけるために実施されます。
その後、専門医として活躍するために、後期研修医制度を受けます。
専門医としての能力の習得を目指し、医師としてキャリアに磨きをかける期間です。
専門医として活躍するために複数の基本領域から希望する研修先を選んで、専攻医として研修を受けます。
初期研修では広く浅く学習しますが、後期研修では専門領域を深く学びます。
専攻医は任される業務量が多いです。
徐々に手術や処置も任されるようになるでしょう。
研修当初はマンツーマンで指導されていても、経験を積むごとに先輩医師からの指導も少なくなります。
研修先の病院によっては医師数が少なく、専攻医が貴重な戦力となることもあるでしょう。
詳しくは後述しますが、専攻医となると副業も可能となり、夜間の宿当直などをこなすと年収アップにつながります。
研修先の選び方
研修を受けるにあたり、研修先の選び方が大事です。
研修先の選び方を曖昧にすると、医師として必要な能力を身につけられないことがあります。
そこで、研修先を選ぶポイントを、7つ厳選しました。
1つずつ確認して実践しましょう。
労働環や教育体制を確認する
労働環境や教育体制を確認することで、働きやすさや医師として必要な能力の効率的な習得につながります。
研修先を選ぶ際は、研修医の受け入れ実績や指導医の在籍数を確認しましょう。
実績が豊富で指導医の在籍数も多ければ「教育制度が充実している」と考えられます。
また、研修医は副業が禁止されていることから、給与以外の収入がありません。
生活を維持させるためにも、給与を確認しておきましょう。
福利厚生の充実度も確認することで、働きやすさにつながります。
福利厚生は病院によって大きく異なり、家賃補助があったり各種施設利用ができたりする場合もあります。
さらに細かな点では、当直の頻度や業務内容を確認してください。
研修先によっては研修医に経験を積ませたいために、多くの当直勤務を求められることもあります。
カリキュラムを確認する
研修カリキュラムの確認も大事になります。
研修医としての初期研修は医師の基礎基本を学ぶ大事な期間です。
数多くの診療科を横断的に経験する期間であり、選択期間の長さやカリキュラムの充実さを重視して選ぶことが大事です。
加えて、研修カリキュラムを滞りなく進められるよう、指導体制を重視して選ぶ必要があります。
例えば、指導医や先輩医師との人間関係を上手く構築できないケースでは、研修カリキュラムも円滑に進まない可能性があります。
カリキュラムと指導体制をセットにして研修先を選ぶと、研修期間中も不安を少なく過ごせるでしょう。
キャリアプランを意識する
研修先を選ぶときはキャリアプランを意識してください。
先述のとおり、初期研修の後は後期研修が待っています。
後期研修は大学の医局に在籍して経験を積んだり、大学院に在籍し博士号の取得を目指しながら研修を受けたりするケースがあります。
初期研修の段階で後期研修を意識した研修先を選べば、目標や目的がぶれずに学んでいけます。
そのためには、医師としてのキャリアプランを描き、研修先を選ぶことが大事になるのです。
特に後期研修の研修先を選ぶ場合は、研修プログラムと自分が描くキャリアが一致しているかが重要です。
専門医としての知識やスキルを深めたいならば、資格取得のための研修制度やフォロー体制を重視してください。
初期研修期間中に当初思い描いていたキャリアとは別の診療科に興味がわくこともあり、後期研修前後はキャリアチェンジを考える時期ともいえます。
医師不足の地域医療に携わったり大学病院で研究に励んだり、さまざまな選択肢があります。
初期研修を経てキャリアプランを見つめ直し、後期研修に移ることが望ましいでしょう。
マッチングデータから選ぶ
研修先を選ぶ際は「何をもとに選ぶのだろうか?」と疑問に思うことでしょう。
研修先を探す際はマッチングデータを分析して選んでください。
「医師臨床研修マッチング協議会」が毎年、データを公開しています。
病院名、所在地、プログラム名、募集定員などを公開しており、そのなかから希望に応じて研修先候補を絞り込めます。
参考:医師臨床研修マッチング競技会
過去のデータをさかのぼると、研修先候補の競争倍率なども分析でき、効率的な施設選びが可能です。
データは定期的に更新されているため、適宜、確認して研修先を探してみましょう。
説明会に参加する
研修先の候補をピックアップしたら、説明会に参加してみましょう。
病院が独自に説明会をするケースも考えられますが、合同説明会を主催する団体も存在します。
例えば、公益財団法人 医療研修推進財団では、初期研修病院の合同説明会を開催しています。
参考:益財団法人 医療研修推進財団
同団体の初期研修病院合同説明会には全国各地の病院が連なっており、希望する研修先の話を聴くことが可能です。
また、個別に気になる研修先があれば直接問い合わせて、相談や説明会の場を設けてもらってもいいでしょう。
WEB上だけの情報では分からないことが少なからずあるため、研修先としてピックアップした病院の説明会に参加することをお勧めします。
病院見学に行く
説明会や相談会に参加した後は、実際に病院見学にも行ってみてください。
実際の環境が分からなければ、研修時の姿を想像できないからです。
また、病院を実際に見学することで、雰囲気や設備などを確認できます。
初期研修や後期研修は決して短い期間ではありません。
研修先の環境が自分に合わなければ、医師として必要な能力を身につけられない可能性があります。
ミスマッチを防ぐためにも、病院見学に行きましょう。
フォロー体制を確認する
ここで解説するフォロー体制は、研修終了後を意味します。
研修が終了しても引き続き採用してもらえるのか、進路に応じて辞める際の相談に乗ってもらえるのか、そういった面でのフォロー体制です。
例えば、初期研修中に今後の進路相談を積極的に行ってくれる病院であれば、安心して研修に取り組めるでしょう。
研修後のフォロー体制については、研修先選びの段階で判明しない場合もありますので、入念な調査が必要です。
もちろん調べても分からない場合もあるので、説明会や相談会などで質問してみるのもいいでしょう。
研修開始から専門医までの流れ
ここからは研修開始までの流れを簡単にご紹介します。
医学部に入学し4年間は座学を中心に勉強
残りの2年間を診療参加型臨床実習
医師国家資格に合格後研修医として2年程経験する
専門医になるために3年から6年程経験する
大まかな流れは上記のようになります。
専門医になるためには医師免許はもちろんのこと、診療参加型研修実習終了の登録証も必要です。
その後、専門医登録をして、プログラム選択、応募、面接、合否通知と流れていきます。
専門医として活躍できるまで医学部入学から10年程度かかる点を念頭に入れておきましょう。
研修医が単独で行える医療行為
初期研修の研修医の段階では、単独で行なえる医療行為に制限があります。
研修医が単独で行える医療行為をピックアップしました。
項目 | 内容 |
---|---|
診察 |
全身の視診や打診、触診 聴診器や血圧計などを用いる診察 耳鏡や鼻鏡などを用いる診察 など |
検査、処置 |
安静時心電図、ホルター心電図 聴力検査、視力検査 など |
治療 |
皮下、筋肉、静脈注射 皮膚消毒、創傷処置 局所麻酔、抜糸 一般の内服薬、注射薬処方 など |
上表の医療行為は、指導医や先輩医師などの指導や許可をもとに行なうことが前提となっています。
研修医と専攻医の注意点
最後に研修医と専攻医の注意点を解説します。
研修医や専攻医を目指す前に確認しておきましょう。
研修医のアルバイトは原則禁止
初期研修中の研修医のアルバイトは原則禁止です。
理由は初期研修中の研修医の立場はアルバイトなどの副業で収入を得るよりも、医師としての基礎を身につけることが優先されるからです。
アルバイトなどに没頭して研修プログラムが身につかないようでは本末転倒です。
「絶対アルバイトをしてはならない」と研修医制度などで決められているわけではありません。
しかし、多くの病院ではアルバイトを禁止しているため、副業などをすることが事実上不可能となっています。
専攻医はアルバイトが可能
後期研修中の専攻医であれば、アルバイトが可能です。
先に触れたように当宿直の外部勤務を入れれば収入アップにつながります。
ただし、アルバイトや副業を頑張り過ぎれば体調管理も難しくなるでしょう。
体調などが思わしくないなかで後期研修のプログラムを受けている病院でミスをしたり、実習内容が身につかなかったりします。
アルバイトが可能とは言え、専攻医としての勤務や研修に影響が出ないように、バランスを保つことが大事です。
専攻医は勤務時間や勤務形態を確認する
専攻医は研修医と同様、研修先の勤務時間や勤務形態を確認しておきましょう。
勤務時間や勤務形態は研修先によって異なるからです。
一般的に専攻医はフルタイムで働くことがほとんどであり、夜勤もあれば週末の当直なども含まれます。
研修先のプログラムによっては夜勤や週末の勤務が集中することもあるでしょう。
研修先を選ぶ段階で、ピックアップした病院の勤務時間や勤務形態を比較してください。
医師向けの保険加入を検討する
研修医や専攻医の場合であっても、医師向けの保険加入も検討しましょう。
研修医や専攻医は指導医のもとで働くわけですが、何か頼まれたら対応しなければなりません。
ときには激務が続くこともあるでしょう。
激務によって体調を崩すことも考えられるため、保険医休業保障共済など医師向けの保険には加入しておきたいところです。
また、稀なケースではありますが医療訴訟などに発展することもあるため、賠償責任保険などの加入も検討しておきましょう。
まとめ
研修医とは医師の基礎を身につけるために初期研修中の医師です。
初期研修ではさまざまな診療科をローテーションで回り、後期研修につなげていきます。
研修医は原則的にアルバイトや副業は禁止ですが、平均年収は一般の会社員よりはもらえる場合が多いです。
研修医から専攻医、そして専門医として自分が望むキャリアを歩むためにも、初期研修や後期研修で勤務する病院選びが重要です。
本記事では研修先の選び方も解説しました。
ぜひ参考にしてください。
この記事の執筆者:医進の会代表 谷本秀樹
大学入試は四谷学院などの大手予備校や多くの医学部受験予備校で、主に生物の集団授業と個別授業で300人以上の受験生を担当。
自身の予備校『医進の会』発足後は、これまで500人以上の生徒の受験と進路指導に携わってきた。
圧倒的な医学部入試情報量と経験値、最適なアドバイスで数多くの受験生を医学部合格に導いてきた、医学部予備校界屈指のカリスマ塾長。