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医学部生が大学院に行くメリット・デメリットとは?学費や難易度も解説

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カテゴリ:基礎知識

「医学部生は大学院に行った方がいい?」
「医学部の大学院のメリットやデメリットは?」
「研究を早い段階で進めたい!」

上記のように、医学部の大学院についてお悩みではないでしょうか。
医学部生が大学院を目指す理由はさまざまであり、メリットやデメリット、学費など総合的に確認してから進学する必要があります。
今回は医学部生が大学院に行くメリットやデメリットを中心に、学費や難易度もご紹介します。
大学院への進学を考えている方は、ぜひ参考にしてください。

この記事を読むとわかること
  1. 医学部の大学院でできること
  2. 大学院進学のメリット・デメリット
  3. 医学部がある大学院でかかる学費

医学部の大学院とは

医学部の大学院とは、博士号を取得するために大学を卒業した後に進学する施設です。
医学部に限らず、大学院に進学することで専門分野のスペシャリストとして、その分野の研究に励んだり大学の教職員として学生を指導したり、より高度な職責を担います。

他の医学部との違い

しかし、医学部の大学院は他学部と比べて特徴が多少異なります。
まず他学部は4年間、大学に通い、学士を取得した後にその分野の学習を延長する形で大学院に進学します。
5年以上在籍し、必要な単位を取得することで博士号が付与されます。
一方、医学部は大学に6年間通う必要があり、大学院では4年間在籍すると、修士をスキップして博士号を取得できます。

医学部出身でなくても進学可能

また、医学部の大学院に進学(入学)して博士号を取得する条件に、医学部であったことは関係ありません。
大学時代は工学部や理学部であった学生も、修士を取得して医学部の大学院に進学するケースもあります。
必ずしも「医学博士=医師」である必要はなく、さらに医学博士を取得した医師が、格段に収入が良いわけでもありません。
研究を主な目的として医学部の大学院に進学する医師も多く存在します。

まとめ:医学部がある大学院とは
  1. 大学で学士取得後に進学する施設
  2. 医学部以外の出身でも、修士取得後に進学できる
  3. 医師が研究を目的に進学する場合もある

医学部の大学院に入る理由

医学部の大学院に進学しなくても医師になれますし収入を確保できます。
では、なぜ医学部の大学院に進学する人がいるのでしょうか。
医学部の大学院に進学する理由を、4つの内容に絞って解説します。

  • 教授になりたい
  • 研究医になりたい
  • 医局からの指示
  • より専門的な知識を得たい

教授になりたい

まずは教授になりたい人が大学院を目指します。
教授になるには医学部に限らず、論文を提出して博士の学位を取得する必要があります。
そのため、将来的に医学部の教授になりたい人は、大学院への進学を決意するケースが多いです。

教授になるのは簡単ではない

しかし、大学医学部の教授になることは非常に難しく、提出した論文が業界に大きな影響を与えるほどのインパクトが求められます。
時には運に左右されることもあり、その時々の大学職員の人事なども影響します。
大学医学部の教授になる道のりは険しいものの、前提条件として博士号が必要となるため、教授になりたい場合は大学院への進学を目指すわけです。

研究医になりたい

研究医になりたい場合も大学院への進学を目指すことが多いです。
医師は研究医臨床医に分類でき、研究医は治療方法が確立されていない病気について研究を重ねて、原因究明や治療方法を追求します。
一方の臨床医は医療現場で患者の診察や治療、投薬、手術などを行う医師です。
つまり、臨床医は患者に接して医療行為を行う医師となります。

研究医には博士号が必須

研究医になるには、大学院への進学だけではなく、博士号の取得が必須です。
理由は大学院で研究手法、論文の書き方などを学ぶからです。
研究医は人手不足の傾向であり、特に国公立大学医学部では研究医になるための独自のカリキュラムを整備していることがあります。

医局からの指示

医局からの指示で医学部の大学院に進学するケースも考えられます。
医局に明確な定義がありませんが、一般的には大学医学部の附属病院において、診療科ごとに形成される組織です。
教授をトップにした人事組織であり、准教授や助教授、講師、医員、大学院生、研修医などで構成されます。

大学院に進学することでキャリアアップも

なかでも研修医はそのまま大学病院での勤務を継続するケースがあり、医局に所属します。
医局では現場と研究室で綿密に連携し、医師の情報も共有されています。
この連携の中で、優秀な医師は大学院への進学を指示され、その後のキャリアにも影響を与えます。
研修医は年収も低い傾向であり、医局から大学院への進学を指示される人物であれば、将来的な年収アップも期待できます。

より専門的な知識を得たい

より専門的な知識を得たい場合にも大学院に進みます。
大学院に進学すると、最新の論文に触れる機会が多く、おのずと医学に対しての知見が深まります。
また、大学院で研究していくなかで、臨床医が触れられない病気の原因やメカニズムなども知ることが可能です。

論文の影響で知見が増える

さらに、医学部の大学院に進学すると、論文を書くために数多くの論文を調べます。
膨大な論文の中から必要な情報を適切に拾う必要があり、情報収集やまとめる能力が養われます。
その作業を繰り返すことで、医学に関する知見が深まり、研究や臨床に活かせるわけです。
自分が書いた論文が評価されれば、教授から推薦状をもらい、海外留学のチャンスも見えてきます。
海外留学によって海外の医学も学べば、さらに医学の知見が深まります。

医学部の大学院に通い始める年齢

医学部の大学院に通い始める年齢は、30歳〜35歳が多いです。
大学院への進学は大学卒業直後をイメージしがちですが、医学部は特徴が異なります。
まず大学医学部に現役で合格し、進学後も休学や留年しなかった場合、6年間学び24歳で卒業です。
その後、25歳の年から研修医として3年程度勤務することで、27歳になるわけです。
研修医として勤務するなかで、前述したさまざまな理由から大学院に進学します。
そのタイミングは人によってばらつきがあり、ボリュームゾーンが30歳〜35歳です。
大学院に進学すれば、研究に没頭できるわけではなく、患者の診察などの業務も並行することもあり、無事に博士号を取得するにはそれ相応の努力が求められます。

医学部の大学院の難易度は??

医学部の大学院の難易度は、大学受験のように偏差値などの数値(指標)がありません。
大学院の受験は、記述形式の問題など自分の意見や考えを述べる内容であり、答えが多様に存在します。
そのため、一概に難易度を示すことが難しいのです。
しかし、大学の各学部の偏差値と倍率を考慮して、その大学の大学院の難易度を判定し、目安にすることが多くなります。
大学受験の偏差値などから大学院の難易度を示すのは、信ぴょう性に欠けると考えられますが、偏差値が高い大学は充実した設備があり、レベルの高い学生が集まると判断できます。
加えて医学部の大学院への進学する人は、研修医の経験を積んだ後に高い学習意欲から受験を検討するため、競争倍率の高さがあります。
さまざまな観点を考慮すると、医学部の大学院の受験難易度は非常に高いと言えます。

医学部の大学院に入るメリット

医学部の大学院に入ることで、メリット・デメリットが生じます。
ここでは医学部の大学院に入るメリットとデメリットをそれぞれご紹介します。

医学部の大学院に入るメリットは、主に4点です。

  1. 博士号を取得できる
  2. 専門分野に関する知識を深めることができる
  3. 研究や発表に打ち込める
  4. 肩書に箔が付く

博士号を取得できる

まずは博士号を取得できることです。
博士号を取得するには、大学院で研究を重ねて論文を書くなどの苦労がありますが、長期間にわたり励むことで取得できます。
また、医局での立場を築くためにも、博士号の取得が必要です。
大学病院などの勤務医に限らず開業を目指す場合においても、博士号を取得することで患者からの信頼感や安心感を高められます。
研修医や教授を狙う人以外であれば、博士号を取得しても、それほど多くの恩恵を受けることがないでしょう。
しかし、組織のなかで少しでも良い立場で働くことや、自分自身の信頼性を高めるためには博士号の取得は非常に有効です。

専門分野に関する知識を深めることができる

医学部の大学院で研究を重ねると、専門分野に関する知識を深められます。
自分自身で率先して研究を行い、学会でその成果を発表、論文作成によって医学に対しての知識を深めることが可能です。
研究過程においても数多くの論文を読む必要もあり、知識も蓄える必要があります。
このような大学院での研究過程で、専門分野の知見が深まるわけです。
より深い知見をもとに医療現場に戻ることで、さまざまな角度から患者に向き合えて、最適な診療ができるでしょう。
さらに大学院で研究をすれば、最新情報をキャッチすることもでき、日々変化する医療業界に対応することも可能です。

研究や発表に打ち込める

大学院に進むことで、研究や発表に打ち込めます。
医局によって違いはあるものの、医学部の大学院に進学すると研修医として働く期間と、研究だけに集中できる期間を分けています。
研修医として働く期間であっても、研究に役立つ役職や職責であることが多く、最終的には自分の興味のある分野へ意欲的に取り組めます。
研究だけに集中できる期間になれば、現場を離れるため、論文作成に没頭できます。
このような環境を考慮すると、医学部の大学院に進学することは、研究や発表などから医学の発展を目指す人に理想的な環境です。

肩書に箔が付く

医学部の大学院に進学して博士号を取得したり論文が評価されたりすると、肩書に箔が付きます。
博士号を取得すれば、その後のキャリアも変わり、医局などで重要なポストを任せられれば、対外的な評価も高まるわけです。
肩書に箔が付いたとしても慢心せずに医学や患者に向き合う必要がありますが、年収アップなどの面からも有利となります。

医学部の大学院に進学するデメリット

医学部の大学院に入るデメリットは、主に3点です。

  1. 金銭的負担がある
  2. 時間的・体力的負担がある
  3. 臨床から離れる期間になってしまう

金銭的負担がある

医学部の大学院に進学すると、当然のことながら金銭的な負担があります。
大学院は4年間であり、その期間の学費の捻出が必要です。
留年や休学をすれば卒業するまで7年や8年になることもあり、費用の負担が増えてしまいます。
また、医学部の大学院に進むと、アルバイトができなかったり大学病院で低報酬や無給で働かなければいけなかったりと、収入面でも制限が生じます。
収入面でみると、一般的な勤務医よりも低収入になることも多いです。
そのため、金銭的な問題で医学部の大学院への進学を躊躇する人もいるでしょう。
学費については後述しますので、捻出できるかどうか検討してください。

時間的・体力的負担がある

医学部の大学院に進学すると、時間的な負担と体力的な負担が増えます。
理由は大学院生として研究したり講義を受けたりしながら、大学病院での仕事やアルバイトをする必要があるからです。
もちろん、大学病院での仕事は医局によって差異があるものの、時には労働時間が長引き、体力の消耗も考えられます。
大学病院での仕事や収入確保のためのアルバイトをすると、時間的な制約もあり、研究や自己学習の時間も少なくなりがちです。
いかにして時間と体力を確保するか、生活リズムの確立などが求められます。

臨床から離れる期間になってしまう

医学部の大学院に進学すると、臨床から離れる期間が発生します。
先述のとおり、医学部の大学院に進学する年齢は30歳以上が多いです。
医師においての30代は技術や知識が大きく向上する時期です。
技術や知識の向上とともに仕事へのやりがいや楽しさを感じる時期でもあります。
臨床への興味がある医師にとっては、大学院に進学して現場を離れることに不安を感じる場合があります。
大学院に進学して4年間の全てで臨床に関われないわけではありませんが、2年程度は現場を離れる可能性を考慮し進学を検討しましょう。

医学部がある大学院の学費は?

医学部の大学院に進学するにあたり、学費も気になるところです。
学費に関して、国公立大学と私立大学を比較してみました。

国公立大学の医学部がある大学院

国公立大学の医学部がある大学院の学費は、4年間総額で236万円程度です。
このうち入学金が28万2,000円、年間の授業料が52万800円となっています。
大学の場合と同様に、国公立大学では医学部やその他の学部でも大学院の学費が大きく変わりません。
ただし、公立大学の多くは、大学の所在地出身者であれば入学金を減免されたり免除されたりする制度もあります。
国立大学、公立大学のいずれにおいても大学院を4年間で卒業するには200万円以上の費用がかかると考えておきましょう。

私立大学の医学部がある大学院

私立大学の医学部がある大学院の学費は、4年間総額で400万〜2,000万円以上と幅広いです。
医学部がある大学と同様で、多額の学費が必要となります。
学費は大学によって大きく異なるため、それぞれを比較してもいいでしょう。
例えば、慶應義塾大学は学部生(大学)の学費は私立大学のなかでも安いですが、大学院に進学すると学費が高くなります。

大学院のほうが学費が安くなることも

一方で学部生の学費が高く、大学院生の学費が安いケースもあります。
大学院の学費は学部生との相関性がないため、イメージや印象で決めつけず、正確に調べる必要があります。
ただし、近年では大学院の定員割れも課題とされており、従来よりも学費を下げてより多くの大学院生を確保する動きも見られます。

国公立大学と私立大学との比較

国公立大学と私立大学の医学部がある大学院の学費を内訳で比較してみます。

大学名 入学金 年間授業料
国公立大学 28万2,000円 52万800円
慶應義塾大学大学院 6万円 135万円
日本大学大学院 20万円 70万円
順天堂大学大学院 20万円 40万円
東邦大学大学院 10万円 40万円

上表のように、私立大学大学院といっても国公立大学大学院よりも学費が安い場合があります。
「国公立=学費が安い」と決めつけずに、各大学を比較しましょう。

MD-PhDコース

研究医の育成を重視する大学は「MD-PhDコース」を設置しており、学位や博士号を目指せます。
MD-PhDコースについて、特徴や設置している大学をご紹介します。

MD-PhDコースとは

MD-PhDコースは「MedicalDoctor」「DoctorofPhilosophy」の略称をつなげた用語です。
MedicalDoctorは医学部医学学科を卒業した際の学位を意味します。
医師であればMDに該当します。
DoctorofPhilosophyは、大学院の博士課程を終了した学位、つまり博士号の意味です。
MD-PhDコースが誕生した背景には、研究医を目指す若い学生を確保できない点が挙げられます。
医学部医学学科の課程では6年間教育を受けて、その後2年間の初期研修が入ります。
そして大学院に進むとしても、最速で26歳からのスタートです。
また、医学部を卒業しても生理学などの基礎医学、疫学などの社会医学の研究をしたい学生の少なさも課題です。
この理由はやはり、早期に研究を志せないからです。
しかし、MD-PhDコースであれば、通常より4年早く大学院に進むことができ、研究に取り組めます。
研究医を目指す学生であれば、非常に魅力的なコースです。
具体的な流れとしては、一般入試で医学部医学学科に入学し、4年次にMD-PhDコースへの編入申請をする方法、AO入試に合格する方法などがあります。

MD-PhDコースがある大学

MD-PhDコースを設置する大学を一覧にしました。

国公立大学

国公立大学の医学部でMD-PhDコースがある大学は以下の通りです。

  • 北海道大学
  • 東北大学
  • 群馬大学
  • 東京大学
  • 東京医科歯科大学
  • 山梨大学
  • 名古屋大学
  • 京都大学
  • 大阪大学
  • 神戸大学
  • 広島大学
  • 徳島大学
  • 九州大学
  • 琉球大学

国公立大学は北海道から沖縄まで全国的に展開されていることがわかります。

私立大学

私立大学の医学部でMD-PhDコースがある大学は以下の通りです。

  • 慶應義塾大学
  • 順天堂大学

国公立大学と比較すると私立大学はMD-PhDコースがある大学は少ないことがわかります。

各大学のMD-PhDコースは、名称がそれぞれで異なるケースがあります。
例えば、群馬大学は「卒前・卒後一貫MD-PhDコース」、慶應義塾大学では「慶應義塾MD-PhDプログラム」となっています。

まとめ

医学部の大学院に進む理由は、教授へのステップアップや研究医として研究に没頭するなど、さまざまな理由があります。
医学部の大学院に進学する年齢は30歳以降が多く、その後のキャリアなどを考慮して検討する必要があります。

また、学費も考慮しておきましょう。
できるだけ早い段階から研究医として活動したいのであれば、MD-PhDコースを設置する大学への進学を検討してください。
医学部の大学院について、理解を深めて医学を追求しましょう。

この記事の執筆者:医進の会代表 谷本秀樹

医進の会代表 谷本秀樹
中学入試の希学園の集団授業で600名以上の多くの生徒を受験指導。
大学入試は四谷学院などの大手予備校や多くの医学部受験予備校で、主に生物の集団授業と個別授業で300人以上の受験生を担当。
自身の予備校『医進の会』発足後は、これまで500人以上の生徒の受験と進路指導に携わってきた。
圧倒的な医学部入試情報量と経験値、最適なアドバイスで数多くの受験生を医学部合格に導いてきた、医学部予備校界屈指のカリスマ塾長。

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